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参加した生徒のひとりは「会計士にならなくても役立つ話だった」と満足げ。まさに生きた社会科の授業だった。高1の男子は「もともと経済に興味があったのですが、公認会計士も将来の選択肢の一つだと思った」と言う。唯一の高3生に「今日は受験勉強よりこちらを優先したの?」と聞くと「推薦で商学部に進むことが決まっている」とのことだった。しっかり将来を見据えている。

ヒットは「東京大学研究セミナー」

「GLFCプログラム」運営の中心メンバーである進路部長の井上一紀さんは、「学年主任をしていたとき、学校の中の成績ばかりを気にする生徒たちがいることが気になっていました。もっと外を見せたい、学校を開きたいと思いました」とプログラム設計の意図を語る。

井上さんは1991年から2005年までシンガポールにある早稲田渋谷シンガポール校にいた。1991年に渋谷幕張シンガポール校としてオープンし、2002年に早稲田大学の系属校となった学校だ。日本でバブルが崩壊する一方で、シンガポールが急成長を遂げるのを間近に見ていた。その視点が生かされている。

これまでの傾向では、教養講座的なものよりもビジネス系の講座が人気だという。特に企業系の話の受けがいい。

一方で、いちばんのヒット講座は「東京大学研究セミナー」である。東大の先生による基調講演のあと、渋幕から東大に進学した先輩たちを交えたパネルディスカッションを行う。保護者も含めて、2018年には約300人、2017年には500人が参加した。

2017年以降の渋幕の東大出願者数はそれ以前に比べて2割程度増えている。1学年は約350人だが、高2の段階では現在約200人が東大を志望しているという。卵が先か鶏が先かではあるが、GLFCプログラムによる刺激の効果もあるのではないかと井上さんは分析している。

2019年の渋幕の東大合格者数は72人。さまざまな進学校を取材した経験から言えば、お尻をたたくだけではこれだけの実績は出せない。高い目標を身近に感じられる環境をつくることが、進学実績の土台となっているのだ。

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渋谷教育学園幕張中学校・高等学校(千葉市)
創立は1983年と新しいが、飛ぶ鳥を落とす勢いで進学実績を伸ばし「渋幕の奇跡」と呼ばれる。高校からの入学枠もあり、高校の1学年は約350人。2019年の東大合格者数は72人。東大・京大・国公立大学医学部合格者数の直近5年間(2015~19年)平均は108.6人で全国11位。海外大学合格者数の多さも有名。卒業生には、俳優の田中圭氏やアナウンサーの水卜麻美氏、サッカー選手の田中マルクス闘莉王氏、落語家の立川志の春氏などがいる。

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新・男子校という選択 (日経プレミア)

著者 : おおたとしまさ
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 935円 (税込み)

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