たどり着いた「お母さん型リーダー」 耳傾ける大切さ
サンリオエンターテイメント 小巻亜矢社長(下)
――子供たちは何歳くらいでしたか。
「ちょうど思春期でした。長男が中学生、三男は小学生でした。離婚して仕事に復帰し、子供も1人で育てているという状態で、体はボロボロ。本当に申し訳ないことをしたのですが、子供に八つ当たりし、子供を見ずに自分の価値観を押しつけていた『鬼母』だったのです」
忙しさを理由に無視していた
「でも、とある出来事で、母親としてなんてことをしてきたんだろうと気づくことがありました。次男を亡くしているから、子供が自分の命より大事だとわかっているはずなのに、子供たちが何か言いたそうにしても、忙しさを理由に無視していた。本当に申し訳なくて、膝からガクガクと崩れ落ちるような気持ちになりました」
――コーチングを学んで、何が変わりましたか。
「コーチングのレクチャーは、実は最初は自分がコーチングを受けることから始まります。今、どんな気持ちか。自分の素の状態に気づくことからスタートするんです。最初は何も答えられませんでしたが、次第に自分が何に喜びを感じるかがわかってきました。化粧品を売ることではなく、女性が元気になるのをみたいと思っているらしい、と」

「自分のことがわかるようになると、ジタバタせずに相手を待てるようになった」
「自分のことがわかるようになると、ジタバタしなくなりました。相手を待てるようになった。子供に対しても、職場でも、この人の心の奥にある本当の声を聞きたいと思うようになったのです。それが、サンリオエンターテイメントに赴任して最初にした『気持ちを聞かせて』と始めた対話の試みにつながりました」
――小巻さんのこれまでの半生は、想定外の連続です。想定外の事態はつらいから避けたいものですが、どう乗り越えてきましたか。
「想定外は確かに怖いですよね。仕事に復帰した後には、乳がん、子宮頸(けい)がんも経験しました。心が折れてしまいそうなこともたくさんありました。でも、想定外がやっぱり自分の枠を広げてくれたと私は思っています。コントロールできないことが多いのが人生です」