たどり着いた「お母さん型リーダー」 耳傾ける大切さ
サンリオエンターテイメント 小巻亜矢社長(下)
「想定外の事態がおきたら、『あ、来たか』と思ってみてください。心が折れちゃったとしても、それでいい。逃げてもいい。諦めてもいい。ただ一つ大事なのは、起こってしまった想定外の事態が、自分にとってどんな意味があったのか、いつも自分に問いかけることを忘れないことです。そして、そのときに考えたことを、しっかり文言に残すんです。それは必ず、自分の財産になりますから」
――文章にしているのですか。
「書いていますよ。手書きでメモしたり、スマホのボイスレコーダー機能を使って、思いついたときに録音したり。夜中に急に思考がまとまることもあるから、そんなときのためにベッド脇には必ずノートを置いています。夜中に文章にまとめるときもあります」
――自分自身をどのようなタイプのリーダーだと思いますか。
「お母さん型リーダーですね。いわゆる『サーバント(奉仕者)型リーダー』だと思います。人の成長を促す人でいたい。コーチングに出合い、人の気持ちに耳を傾けることの大切さを知ったからこそ、こんなリーダーシップのあり方にたどりついたのだと思います」
みんなのお母さんに
「ピューロランドでは、私のほうが新人です。ビジネスの具体的なアイデアを出すのはスタッフのほうがよほど先輩なのです。だから、私はみんなのお母さんになって、山の麓から登るときに落後者がいないか、雨が降りそうだけど傘はあるか、といった具合に見守らなければと思ったのです」
――職場でお母さんとみられることに、嫌悪感を感じる女性もいるようです。
「そうなんですか。それは、お母さんの役割をお茶くみをする人というように固定観念で考えているせいではないかしら。お母さんの役割って実に幅広いのですよ。見守ったり成長を促したりするだけでなく、例えば井戸端会議のように異業種交流の場に出かけて新しい情報を持って帰ってくることもある。苦手意識があったデジタルのビジネスを学んだり、新しい資格を取ったりと、今もいろいろなインプットを絶やさないようにしています」
「会社でも『みなさんのお母さんになります』って自分から誇りをもって宣言してしまっています。スタッフには最初はドン引きされたかもしれませんが、最近はニヤニヤされていますね」
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サンリオエンターテイメント社長、サンリオピューロランド館長。東京出身、東大大学院教育学研究科修士課程修了。1983年、サンリオ入社。結婚退社、出産などを経て、サンリオ関連会社にて仕事復帰。2015年サンリオエンターテイメント取締役、16年サンリオピューロランド館長、19年6月から現職。子宮頸(けい)がん予防啓発活動「ハロースマイル(Hellosmile)」委員長、NPO法人ハロードリーム実行委員会代表理事、一般社団法人SDGsプラットフォーム代表理事も務める。
(藤原仁美)
※サンリオピューロランドは国内での新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年2月22日から3月12日まで臨時休館しています。