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「冷ややか」マイナスの印象も

渡辺まどか氏

渡辺まどか氏

ロジカルシンキングのイメージは見方が分かれる。整然と筋道が立っていて話の通りがよいという肯定論がある一方で、「論理先行」「テクニカル」「冷ややか」などのマイナスイメージもある。取り組んだことのない人からは「緻密な論理構築が大変」「主張が強くみえてしまいそう」といった見方もされがちだ。しかし渡辺氏は「あまりロジカルでなくても構わない」という。「コンサルタントと同じレベルの論理構築は必要ない。そもそもロジカルシンキングは対話のベース(基盤)という役割であり、主役ではない。むしろ、伝えたい内容を掘り下げて考えるほうに力を注ぎたい」と「ロジカル頼み」を戒める。

自分の考えが主観に基づくと感じている場合、大勢の理解を得にくくなりそうだと尻込みしてしまい、つい提案や発言を控えてしまいやすい。渡辺氏は「オリジナルの主張に主観が混じるのは当たり前の話。ただ、根拠のない主観は共感を得にくい。主観に根拠を添えて、多くの聞き手から納得を得るための装置としてロジカルシンキングに出番がある」と指摘する。もっとも行き過ぎには弊害もある。誰もが「ロジカルの作法」にのっとって通りのよい意見ばかりを打ち出すようになると「本末転倒の状況になり、ロジカルシンキングの流儀が志や問題意識を封じ込めかねない」(渡辺氏)

ロジカルシンキングの伝道者らしからぬ物言いは、自らの苦い体験とつながっている。コンサルタント会社に所属していた当時は関連書を読み込み、仕事に生かしながら自分流のロジカルシンキングに磨きをかけた。一時期は所属先で「期待の星」と評価されたが、やがて伸び悩んだ。「顧客との間で強い信頼関係を築けなかった」と、理由を自己分析する。隙のない論理を組み立てて提案や助言を用意したが、ロジカルシンキングから導かれる「答え」だけでは顧客との距離感を埋められず、コンサルタントとしてのパフォーマンスが下がった。「ロジカルシンキングに頼り切ることの危うさを知った」(渡辺氏)。

データがもたらす説得力

「ロジカルシンキングはいかに効果的・効率的に思いを伝えるかのツールであり、howの部分。でも、ずっと大事なのは何を伝えるかのwhatや、なぜそうしたいかのwhy。ツールに頼った客観的な提案だけでは聞き手の心を動かしにくい。やはりwhatやwhyの強さが決め手になる」と渡辺氏はみる。伝達効果を高めるロジカルシンキングという武器を手に入れることによって、whatやwhyの練り上げに時間とエネルギーを注ぎ込める点が論理思考を学ぶメリットだという。本書で提案内容を1枚のシートにまとめているのも、1枚に凝縮する過程で思考が整理され、主張の強度が増す効果を狙っている。「伝わるかどうかを左右するのは、論理の見かけではなく、パッション・情熱の濃さ。ロジカルシンキングは自分の考えの熱量を試すうえでも役に立つ」(渡辺氏)

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