名門東海の男子歌劇団、名物「カヅラカタ」の本気度
東海中学・高校(下) 教育ジャーナリスト・おおたとしまさ
――今日は本番前日だが、年間を通して普段はどんな活動形態なのか。
現在の部員数は21人です。顧問はまったく干渉しません。それはいいことだと僕は思っています。だから練習日も自分たちで決めていて、本当にまちまちなんです。たとえば4月の公演が終わると、5月とか6月はやることがなくて、みんなでサッカーとかしています。夏休みくらいからようやく舞台の準備を始めて、9月に入るとほぼ毎日、週末もフルで練習します。
――年2回の公演があって、それぞれに半年の準備期間があるが、その3分の1くらいはサッカーをしていると(笑)
マイペースな部活なんで……(汗)。毎年違うんですけど。

オーケストラスペースのまわりを「銀橋」と呼ばれる特設ステージが囲む
――予算管理はどうしているのか。
そこは顧問の先生とか、保護者の「すみれ会」とかがやってくれているので、具体的な金額などは僕は知りません。DVDやポスターをつくって販売したり、パンフレットに広告を載せて広告費をいただいたりしています。
――明日はどんな役柄を?
僕はショーヴランという準主役の男役を演じます。
――将来の夢は?
悩んでいます。医者になろうと思ってこの学校に入りました。でもこの学校の先生を見ていて、教師という職業もいいなと思いました。でもカヅラカタを経験して、ひとを喜ばせる仕事もしてみたいなと思うようになりました。だからエンタメ系には興味があるけど、役者じゃないなとも思います。かといって、1年間団長をやってみて感じたのですが、僕はリーダーに向いている人間じゃない。うーん、いまはeスポーツを中高の部活に広める活動に興味がありますね。
高校生の段階ではっきりした夢があるのなら、それはそれで立派である。あとからその夢が変わってしまうかもしれないが、いまはそれにまい進すればいい。一方で高校生の段階ではっきりとした夢がないことは、いたってまっとうなことである。大きな迷いや悩みを抱えているのなら、中高生のいましかできない、とても有効な時間の使い方をしているということだ。
インタビューを終えた私は「団長は、医者になろうと思ってこの学校を選んで、いまはものすごく迷っているんですって」と教頭の西形さんにこっそり耳打ちした。すると西形さんは「思惑通り。どんどん迷ってほしい」とほくそ笑んだ。
創立は1888年。もともとは浄土宗の僧侶育成のための学校としてつくられた。高校から1クラス分の入学枠があり、高校の1学年は約400人。2019年の東大合格者数は37人、京大が40人。東大・京大・国公立大学医学部合格者数の直近5年間(2015~19年)平均は177.2人で全国2位。特に国公立大医学部合格者数では全国でもダントツの1位。卒業生には、予備校講師の林修氏、ニュースキャスターの木村太郎氏、作家の大沢在昌氏、元総理大臣の海部俊樹氏などがいる。
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