希望は伸びしろにあり AI×データ時代の日本再生戦略
紀伊国屋書店大手町ビル店
だが、そこにこそ著者は希望を見いだす。「多くの分野で伸びしろは巨大だ」。2章の後半以降はそこを伸ばすための戦略地図であり、工程表だ。巨大な伸びしろを圧倒的なスピードで駆け上がる「勝ち筋」を示し、求められる人材像(第3章)とその育成(第4章)、そのためのリソース再分配(第5章)の打ち手を次々と提言していく。
「この国はスクラップ&ビルドでのし上がってきた。今度も立ち上がれる」。映画「シン・ゴジラ」に出てくるこのセリフに触発されて、かれこれ3年にわたり続けてきた思考の集大成は、「さあ行動だ」と呼びかけて終わる。国家レベルの施策が必要な打ち手も多いが、ビジネスパーソンがそれぞれの場所でできることへの示唆も多く、行動への刺激になる一冊だ。
「未来への不安からか関心からか、店頭で手に取っていく人が多い」とビジネス書を担当する西山崇之さんは話す。毎年刊行されるタイプの未来予測本では飽き足らない読者が本格的な考える材料を求めて買っているようだ。
みずほのシステム統合本、突出した売れ行き
それでは、先週のベスト5を見ておこう。今回は総合ランキングを取り上げる。
1位は、前々回の本欄「みずほFGのシステム統合 苦闘の19年追う迫真のルポ」で紹介したノンフィクション。冒頭でも触れたように「突出した売れ方」(西山さん)で、金融の街での関心の高さを示す。2位に今回取り上げた本。3位は婦人服メーカー、東京スタイルの中興の祖をモデルにした経済小説。戦前から今日までのアパレル産業の興亡史が描かれている。4位は、国語学者と教え子の人気アナウンサーが話す力について語り合った本。ラグビーワールドカップ日本大会を振り返ったDVDブックが5位に入った。
(水柿武志)