新卒採用もはや制度疲労 企業も学生もジョブ型志向
2020年 変わる働き方(1) リンクトイン・ジャパン代表 村上臣

リンクトイン・ジャパン代表 村上臣氏
(2)性悪説「社員管理」の限界 新型コロナで浮き彫りに >>
4月から新年度。新入社員を迎える職場も多いでしょう。でも、これまでのような新卒一括採用を中心とする採用のあり方も、そろそろ終わりを迎えるのではないでしょうか。
私は新卒採用や中途採用に関わってきた経験もあり、現在はIT(情報技術)を活用する人材サービス業界に属することから、採用に関する相談を受けることが多くあります。また、個人的に支援しているスタートアップの採用を手伝うなかでも、新卒一括採用の限界を感じています。通年採用の会社も徐々に増えてきており、採用する企業側も採用される学生側も、お互いがいろいろな方法により理解を深め合うというプロセスが、今後はますます大事になってきます。
「メンバーシップ型」から「ジョブ型」へ
経団連が定める企業の「選考解禁日」など、新卒採用の現行ルールはまもなく終わりを迎えるでしょう。これからは職務や勤務地などが限定されない「メンバーシップ型」の新卒一括採用から、職務などを明確にして採用し、個々人がキャリアを磨く、欧米型の「ジョブ型」の通年採用が広がっていくとみられます。
新卒の就職活動はまさに大きな過渡期にあるといえます。文部科学省の調査によると、大学の学部の種類がこの50年で8倍以上にもなっているといいます。1966年にわずか63しかなかった学部の種類が、2018年には526へと増えたというのです。 実はこれは、企業の動きに呼応するように、大学も「ジョブ型」を念頭に専門性を意識した教育を打ち出しているということでしょう。
これまで会社員は会社に命ぜられるがまま、ローテーションによる職務変更や転勤など、社内キャリアを積んできました。つまり、キャリア育成は会社が考えることであって、自身が特に意識する必要がなかったともいえます。しかし、これからは「自分がどのようなスキルを伸ばすのか」「どのような働き方を選択するのか」といったことを客観的に把握し、その時々に選択していく「キャリア自立」が必要となります。