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実際にテレワークを活用したIT企業に勤める30歳代女性に聞きました。

感染防止へ向けた小中学校の一斉休校に合わせてテレワークを選択。自宅で子供の世話ができる半面、作業に集中することが難しかったそうです。別の会社に勤める夫も在宅勤務となり、オンとオフの気持ちの切り替えができなかったといいます。

テレワークは通勤が不要で、子供の面倒をみながら仕事ができるなど、働き手にとって効率がよい一方、自分で時間を管理しなければならず、同僚とのコミュニケーションが取りにくいなど不便な点もあります。ウェブ会議を行おうとしても通信環境が悪く、音声や画像が途切れてしまい、支障を来したこともあったそうです。

社員の健康管理、難しく

社員の健康管理について会社に指導・助言する産業医の立場から言えば、日常生活を送っている空間で仕事をすることは、安全で衛生的な労働環境の保全という観点に照らしても、特に問題はありません。

ただ、注意してほしいのは、管理者が社員の健康状態を把握することが難しくなるという点です。体調を崩したとしても、自主申告しなければわかりません。自己管理に任せるしかなく、働き手自身のセルフケアが大切になってきます。

IT企業の技術部門に勤める40歳代の女性の事例です。

体調不良が続いたことから、負担軽減のためテレワークを選択していました。打ち合わせなどのため、週に1、2回出社することになっていましたが、徐々にその回数も減ってきました。仕事はしっかりこなしていたため、上司は問題視することなく、そのままにしていましたが、いつしか全く顔を出さなくなり、周りが慌て出します。

ビジネスチャットのやり取りを改めて見てみると、「仕事で疲れて大変」「夜眠れない」などとの書き込みが見つかり、人事担当者が産業医と面談を指示。ようやく心療内科医の診断を受けることになりました。

この女性の場合、真面目な性格から、ついつい働き過ぎて心身の状態が悪化。にもかかわらず、人と顔を合わせる必要もなかったため、仕事を続けてしまったということです。

信頼関係と意思疎通が不可欠

テレワークは働き手の自己管理が前提です。勤怠不良が認められる人に遠隔勤務を許すことは、本人にとっても会社にとってもリスクとなりかねません。

テレワークを活用している社員に定期的な出社を義務づけるなど、現状を把握するための対策が会社に求められると同時に、社員にも自己管理の徹底と、上司への報告を欠かさないことなどが求められるでしょう。

新型コロナ対策にとどまらず、働き方改革などから、テレワークの推進が求められています。一段の普及には、労使双方の信頼関係と、緊密なコミュニケーションが不可欠といえそうです。

植田尚樹
1989年日本大学医学部卒、同精神科入局。96年同大大学院にて博士号取得(精神医学)。2001年茗荷谷駅前医院開業。06年駿河台日大病院・日大医学部精神科兼任講師。11年お茶の水女子大学非常勤講師。12年植田産業医労働衛生コンサルタント事務所開設。15年みんなの健康管理室合同会社代表社員。精神保健指定医。精神科専門医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。

※紹介した事例は個人が特定できないように一部を変更しています。

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