スマホもパソコンも禁止 名門ラ・サールの「寮生活」
ラ・サール高校・中学(上) 教育ジャーナリスト・おおたとしまさ
寮での生活は、現在の日本の一般的な中高生の生活からはだいぶかけ離れている。ケータイ、スマホ、パソコン、ゲーム機の所持は禁止。電話は公衆電話を使用する。テレビは各フロアにある娯楽室でみんなで見る。そもそも中学生は8人部屋。プライバシーなんてない。同じ部屋に中1から中3までの3学年が同居する。高校になると4畳ほどの個室が与えられる。高3になると寮を出て、近隣に下宿する。

各フロアにある娯楽室
高3で寮を追い出されるのはもともとはキャパシティーの問題だった。しかしそれが伝統となり、他人の家でお世話になるという経験も、いまではラ・サールの教育の一部となっている。ただし最近では寮が常に満員御礼状態で、高2で下宿するケースもある。
もちろん規律正しい。起床は7時。7時20分の点呼の時間には、自分の部屋の前の廊下に整列していなければならない。その後大きな食堂で朝食をすませ、登校する。遅れると、寮の玄関の鍵が閉められて、出られない。ペナルティーである。昼休みには寮に戻り昼食をとる。19時すぎまでに入浴と夕食をすませ、その後は毎日「義務自習」がある。各フロアにある自習室で3時間勉強するのだ。「自習」とはいうものの、自由なのは何を勉強するかであって、勉強しない自由はない。高校生はその後も自分の部屋で23時45分までは勉強していいことになっている。

中学生用の自習室での「義務自習」時間(一部加工しています)
ラ・サールでは高2の2学期以降、各教科で「週テスト」が実施され、それが大学受験へのペースメーカーになっている。週テスト対策を続けていれば、塾に通わずとも難関大学合格への学力がつくしくみだ。元祖"塾要らず"の学校である。高1までは普段の授業の予習復習や定期試験対策を中心に自習する。
寮生たちが、スマホやゲーム機を持たず、毎日3時間勉強し、規則正しい生活をしているわけである。自宅から通う生徒たちも自宅で保護者から「寮に住んでいるお友達はみんな……」と諭されると反論できない。
確実に親離れ・子離れできる
寮に暮らす高瀬谷薫さんに話を聞いた。福岡県出身の高校2年生だ。
「中1の最初はホームシックになる同級生もなかにはいましたが、ほとんどは気楽にやっていました。大部屋では多少先輩に気を使いましたけど、上下関係を学ぶ機会になったかなとは思います。友達ができやすいことが、寮生活のいちばんいいところですね。言わずもがな、学校は近いし、生活リズムが崩れることもありません。食事の質も最近は随分と上がってきている気がします」