「間違いだらけの」経営改革 企業を壊す100の誤解
『経営改革大全』
資本主義から「志本主義」へ
著者はこの本を執筆した動機を「義憤」からだと言い切ります。例えば、最近のガバナンス強化の流れについて、次のように苦言を呈しています。
「たとえば、昨今のガバナンス論議に象徴されるアメリカ型資本主義への傾斜は、時代錯誤も甚だしい。ROEという短期的、かつ株主偏重の指標を掲げて海外資本投資家に『へつらう』姿勢は、長期投資や『三方よし』などの日本企業の本来の持ち味を蝕(むしば)んでいく」
ガバナンスだけではなく、SDGs、働き方改革、デジタル変革なども同様だと言います。「最近の経営理論は、あまりにも表面的で、本質を見事にはずしている。このままでは日本企業の弱体化に拍車がかかるばかりだ」と嘆きます。そして、実はこの本のタイトルを『間違いだらけの経営モデル選び』にしたかったと打ち明けます。この名称は著者が若い頃に親しんだ名著『間違いだらけのクルマ選び』をなぞった発想といいます。
本書の目的は経営モデルの解説にとどまりません。次世代へ向けた日本企業の成長を願う応援の書でもあるのです。
(おわりに 431ページ)
◆編集者からひとこと 日本経済新聞出版・堀口祐介
本書はどこから読んでも発見があるユニークな本です。経営手法を解説するこの手の本の大部分は、手法の概説とそれに関する事例で埋められています。でもそれだけでは実践には移せません。
本書は、世間で言われている経営手法をまず疑い、日本企業において行うべき挑戦は何かを解説します。発想の転換、自社の戦略の危うさ、先端の議論、日本が持つ本当の強みなど様々な気づきが得られる、口のうまいコンサルタントにだまされないための知的武装の本でもあります。
コロナ禍によって経営スタイル、働き方など日本企業の形が変わろうとしています。今まで以上に従来の発想にとらわれない改革が必要となります。そのようなときに、議論の殻を破るヒントが得られるのが本書です。