消えたのは雑談と忖度 テレワークが変える会議文化
20代から考える出世戦略(81)
「そうして聞いてみると、案外いいこと言ってたりするわけですよ。それに対してたとえ私が『若造が調子にのるなよ』という風に嫌そうな表情をしていたところで、周りにはそれがはっきりとは見えないでしょう。せいぜい画面にうつった小さな一コマの表情なわけで。すると『正論がまかり通る』会議になってしまうんです」
私は思わず「変わりましたね」と言って声に出して笑ってしまったのですが、イシイさんも同様に笑われました。
「そう。ずいぶんと変わってしまったんですよ。正論が悪いわけではないし、その後で出てくる調整案件はあらためて考えればよいんですよね。ただ気を使ってもらえないのが寂しくてねぇ」
イシイさん自身は影響力があるものの、決して我を張るタイプではありません。だからそうして決まってゆく議題についても必ず一言以上の発言は行いながら、自分も合意しているという姿勢をあらわされているそうです。
1日10本以上の会議があたりまえに
「もうひとつ憂鬱なのはね、会議が増えたことなんです」
それは大変ですね。でもなぜなんでしょう?
「会議の時間が短くなったんですよ」
ああ、なるほど。それはそうですよね。会議室を移動したり、集まったりするための時間が不要ですからね。
「そう。それに加えて、今まで2時間きっちりかけていた会議が30分で終わることも増えましたね」
その理由はなんでしょう?
「雑談がなくなったからですよ。今までの会議だと、集まった時点ではまず雑談するじゃないですか。議題の途中で脱線することもあるし。また、会議の時間を2時間とっていたら、次の予定はそのあとからだから、議論が終わったとしてもそのまま会議室にいたりしますよね。でもリモート会議だとログアウトするだけだし、そもそも家にいたりするから会議の場に長居しないんです。それに会議室での雑談というのは、人に聞かれないところで雰囲気を共有するからこそできるもので、リモート画面越しにはなかなかそういう雰囲気にもなりませんね」