感染症のプロ語る リスクコミュニケーションのイロハ
リブロ汐留シオサイト店
日本特有の弱点も指摘
おもに情報を発信する側に重点を置いた考察だが、情報の受け手にとっても示唆に富む記述が随所にある。細かい言葉遣いや自らの偏見が正確な理解を妨げる要素になり得る。発信側が注意すべき点は受け手側が誤解しやすい点でもあるのだ。
日本のリスクコミュニケーションの弱点も多数指摘している。日本の感染症対策はアウトカム(結果)設定がないとか、過去の失敗から学ばない、最初の計画にこだわって臨機応変な対応が後手に回るなどの指摘は、今回のパンデミック対策でも多くの人が感じている問題点だろう。岩田氏は11日発売予定で新刊『新型コロナウイルスの真実』(ベスト新書)も準備しており、こちらも注目を集めそうだ。
リスクコミュニケーションは、自分の会社が不祥事を起こしたときなど感染症対策だけでなく様々なビジネス局面で必要になる。リスクコミュニケーションに「天井はない」という本書から学べることは多く、自らのリスクコミュニケーション能力を高めていく一助になるはずだ。
朝日社主描くノンフィクションが1位に
それでは先週のベスト5を見ておこう。
今回取り上げた本は新書部門の1位で、ビジネス書のベスト5には入っていない。
ビジネス書でトップの本は、先日亡くなった朝日新聞の3代目社主村山美知子氏の生涯をたどったノンフィクション。晩年に秘書役を務めた元事件記者が経営陣との暗闘も含めて赤裸々に描いた。朝日新聞社は書店の近所に立地する。それで売れ行きがよかったようだ。
昨秋刊行された成功哲学の古典的名著の漫画版が2位に入った。3位はお金と人が集まる話し方のコツを伝授する本。4位の本は、センスを磨くことで仕事力をあげる方法を説く。14年刊と刊行から6年経つが、近刊でよく売れている『世界観をつくる 「感性×知性」の仕事術』の著者の一人の本で、関連書として浮上した。5位には、eコマースの専門家による買い物をめぐる未来予測がランクインした。
(水柿武志)