筑駒生が文化祭で学ぶ裏方としてのリーダーシップ
筑波大学附属駒場中学・高校(上) 教育ジャーナリスト・おおたとしまさ
IT化促進で「働き方改革」実施中
――昔聞いたことがあるんですが、電力部門って職人芸的なところがあるんですよね。
部門長 はい。学校で使用できる電力は限られているので、デコごとにいつどれだけの電力を使うかを申請させて、それを5分単位で合計して、ブレーカーが落ちないように3日間のタイムテーブルを調整します。どこかのデコが勝手に時間をずらしちゃったりすると、落ちちゃうときは落ちちゃうんですが、ここ数年は一度も落ちていません。
副委員長 あれは神業だよね。
――筑駒の文実の自慢は何ですか?
部門長 実行委員の人数が少ないことじゃないですかね。高校生が24人、中学生が18人。それだけで運営しています。ポイントポイントで作業を手伝ってくれる付属委員というのはもっとたくさんいるんですが。
委員長 その分仕事が多くてめちゃめちゃきついですけど(笑)。徹夜とかにならないように、そこは年々改善しなきゃいけないポイントです。パソコンなどを使うようになって、全体的には仕事量が減っている傾向にはありますが。
副委員長 最近は普通に眠れるようにはなってきているよね。部門長はすごく仕事ができるから、徹夜なんてほとんどしていないし。
文化祭でプログラミング技術習得
――もともと「ブラック企業体質」だったけど、IT化を進めることで働き方改革が進んでいるということですね。
副委員長 でも広報部門は、使える技術が増えたために、仕事量が増えています(笑)。僕は高1の9月に初めて自分のパソコンを買って、そこから(サイト作成に使う)HTMLの書き方の書籍を買って、独学でイチからホームページの作り方を覚えました。だからめちゃめちゃキツかった……。
――それは一般企業でも起きていることかもしれませんね。IT化によって仕事は簡略化できているはずなのに、逆に新しい仕事も増えたという。
副委員長 でもそれを選択したのは僕なんですよ。それには結構理由があって……。それまでも文実に関わっていて、やりがいは感じられるんですよ。それだけで十分やる意味がある。でもどうせこれだけの時間と労力をかけるなら、それを通じて自分としても何か将来性のあるスキルを身につけたいと思ったんです。
――自分のスキルアップの機会として文実の活動を活用したわけですね。
副委員長 プログラミングを独学でやろうと思っても続かないじゃないですか。でも逆に、追い込まれれば、絶対にどうにかなるんですよ。
――変化の激しい時代だから新しいことを学び続けなければいけないと言われていますが、自分で機会をつくって、その機会によって自分を変えていくというその気概があれば、どんな時代になっても大丈夫そうですよね。
副委員長 いま大人たちが「やっておけ」と言うことすらすでに古い可能性が高いですからね。
サーバントリーダーシップ(他者に奉仕するタイプの指導力)、働き方改革、新しいスキルの獲得……。高校生でもここまでできるのである。大人も言い訳していられない。
(中)都会の超進学校・筑駒 なんでコメ作りをガチで体験?>>
創立は1947年。1学年160人だが、毎年100人前後の東大合格者を出し、東大合格率の高さでは圧倒的な強さを誇る。2019年の東大合格者数は119人。東大・京大・国公立大学医学部合格者数の直近5年間(2015~2019年)平均は127.6人で全国9位。卒業生には、参院議員の小池晃氏、東京大学付属病院元院長の門脇孝氏、みずほフィナンシャルグループ元会長の塚本隆史氏、JR東日本会長の冨田哲郎氏、経営共創基盤代表取締役CEOの冨山和彦氏、演出家の野田秀樹氏などがいる。