都会の超進学校・筑駒 なんでコメ作りをガチで体験?
筑波大学附属駒場中学・高校(中) 教育ジャーナリスト・おおたとしまさ
歴代校長は農業系の研究者
稲作体験のようなことを行う学校はほかにも多くある。しかし筑駒の水田稲作学習はより本格的だ。
4月下旬に苗床をつくり、種をまく。学校内に温室があり、そこで発芽させ、苗が育つのを待つ間、5月中旬に田んぼで施肥、除草、耕起をしておく。6月初旬の田植え講習会で田植えの手順を事細かに学んだ生徒たち自らが田植えする。夏休み期間中も2度ほど除草作業を行う。炎天下での作業のあとは、スイカで打ち上げをするのが習わしだ。10月には稲を刈る。刈った穂は稲架(はさ)がけして約1カ月天日に干し、学校にある脱穀機で脱穀する。

田植えを終えた生徒たちが学校に戻っていく
便利な農機具をできるだけ使わずに、昔ながらの方法で稲作を体験する。農学系の大学でも通年を通してここまで本格的にやるのは珍しいと担当教員は言う。
「総合的な学習の時間」をこれにあてており、あくまでも教科外活動として取り組むが、水田委員会なる組織をつくり、生徒たちも主体的にこれに関わる。水田委員は、筑駒の三大行事といわれる音楽祭実行委員、体育祭実行委員、文化祭実行委員と並ぶ要職とされる。「学校の伝統を守っている自負がある」と水田委員長は言う。
ちなみに筑駒の前校長の林久喜さんは、筑波大学生命環境系教授で、農学博士でもある。まさに農業のプロだ。歴代の校長もみな農学系の研究者である。校内には畑もあり、農芸部が活動している。農業はいまでも学校のアイデンティティーなのだ。超進学校の意外な側面である。