都会の超進学校・筑駒 なんでコメ作りをガチで体験?
筑波大学附属駒場中学・高校(中) 教育ジャーナリスト・おおたとしまさ
人間は最後は自然に負ける
数年前、田植えの実習を見学したことがある。学校からケルネル田んぼへと出発する前に、教員から生徒たちに伝えていた3つの注意事項がいまでも記憶に残っている。
「1つめ。学校と水田の間の移動経路を泥で汚さないように。2つめ。苗が主役です。キミたちが主役ではありません。ついでに言っておきますが、人間は地球上では威張っていますが、最後は自然に負けます。3つめ。地下足袋はきょう中に家に持ち帰ってください。学校の中に放置すると、そこからいろいろなものが生えます。もういちど言います。人間は地球上で威張っていますが、最後は自然に負けます」
すばらしい注意事項だと思った。筑駒生たちは冗談半分にこれを聞くが、いずれその言葉の重みに気づくのだろう(この記事の執筆時点で新型コロナ禍は想定していなかった。その意味では「負け」てはいけないのだが、「打ち勝つ」というのもちょっと違うと思う)。都会の街を泥んこになって意気揚々と歩く筑駒生たちを見て思う。その泥臭さはきっと人生の財産になる。忘れないでほしい。