新型コロナが問う リモートワークが生み出す「価値」
リモートワーク時代の働き方(上) &Co.,Ltd.代表取締役 横石崇氏

&Co.,Ltd.代表取締役、Tokyo Work Design Weekオーガナイザー 横石 崇氏
日本でもここ数カ月で、急速に議論や導入が進んだ「リモートワーク」ですが、そもそも「リモートワーク」と「オフィスワーク」のどちらが良いとか悪いとかいう話ではありません。新型コロナウイルスが猛威を振るい始める前、世界的な流れはむしろ逆でした。その背景を踏まえた上で、今、私たちに問われているのは、働くことの本来の意味です。「会社に行くこと」の意味から考え始める必要があります。
「リモートワーク・オフィスワーク」の使い分け
在宅ワークをはじめとする「リモートワーク」という働き方について、多くの会社やビジネスパーソンが現実的な問題として受け止めるようになったのは、日本では最近のことですが、海外では何年も前から試行錯誤されてきたことでした。そして、米国のヤフーやIBMのような先進的な企業では、既に「リモートワーク禁止」という流れになっていたのです。
率先してリモートワークを導入してきた企業が経験的に感じていたことが「リモートワークには限界がある」ということでした。「社員がサボる」「仕事のスピードが落ちる」「思ったような成果が上がらない」といった問題から、今ではグーグルやフェイスブックなども「リモートワークを認めない」方針を固めていたのです。
世界の流れは「リモートワーク」よりも「オフィスワーク」が見直される方向に向かっていました。例えば、会社の中におしゃれなカフェを作ったり、軽い運動ができるジムを作ったり、快適なオフィス環境を整えることで、1分でも1秒でも人がオフィスにいたいと思える「オフィス作り」に企業は大きな投資をしていました。少しでも同じ空間・時間を共有し、人と人が出会って会話が生まれやすくなったり、お互いの仕事に関与し合えたりする手段を、積極的に作り出していたのです。エンジニアやデザイナー、プランナー、そして経営者など、様々な人が一緒に空間・時間を共有できる「オフィスワーク」が新しい価値を生み出していくことができる、という考え方がここ数年のトレンドでした。
この流れの中で起こったことが、今回の新型コロナウイルスの感染拡大による、世界同時多発かつ強制的に「リモートワーク」をしなければならない状況です。現在、日本で起こっている「リモートワーク」に関する様々な議論の背景には、このような流れがあったということを、まず知っておいてほしいと思います。