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塾・予備校を突破口に、学校へ波及

ブラジルには三井物産社員として足掛け5年滞在し、教育事業も手がけた。帰国後は日本国内の教育事業統括を担当したが、「日本の教育を大きく変革する」というミッションをスピード感を持って達成するには、大企業の枠から飛び出し、自ら起業するしかないと決意を固めた。入社から11年がたっていた。

起業にあたっては東京大学の同級生2人に声をかけた。共にテニスサークルで団体戦を盛り上げるのに奮闘していた中下真氏は31歳でリクルート中国の社長を任された人物。もう1人は電子情報工学科の同級生のうち、稲田氏が「最もすご腕のエンジニア」と認める川原尊徳氏だ。

自分たちのミッションも明確にした。学習を一人ひとりに最適化し、「基礎学力」を最短で身につけられるようにすること。そこから捻出される時間で、他者と議論したり協力したりする「社会で生きる力」を伸ばすこと。それらによって子供たちに笑顔を増やすことが最終目標だ。

最適化を実現するために、従来の学習方法の問題点も洗い出した。Aという単元がわからなければ、Aの問題演習を繰り返し解く。それが従来のやり方だ。しかし、単元Aがわからないのは、実はそれよりずっと手前のBやCの単元が理解できていない可能性が高い。だが、生徒自身はもちろん、ベテランの教師でなければなかなか根本原因に気づけない。そこで一人ひとりのつまずきの原因を特定し、学習する必要のある内容や分量、順番を自動的に弾き出して提示してくれるAIを作り上げた。

「日本の教育を変える」と意気込む稲田氏だが、勇んで文部科学省や公教育の現場に乗り込んだわけではない。まず照準を定めたのは塾・予備校だ。

「日本は塾・予備校のマーケットが海外に比べて大きいんです。しかも塾・予備校は民間なので、新しいことを取り入れるのに積極的です。日本人は中高生の半分近くが塾に行くので、そこで変革が起きれば、学校にもいずれ波及していくと見ています」

「子供たちの笑顔を増やす」をビジネスの最終目標に位置づけている

「子供たちの笑顔を増やす」をビジネスの最終目標に位置づけている

創業から3年。ビジネスは順調に拡大し、もくろみ通り、学校現場からの問い合わせも急増している。今後について問うと、こういう答えが返ってきた。

「今は『中高生』に『基礎学力』をつけてもらえるサービスを『日本』で展開していますが、この3要素をそれぞれ広げていきたいと思っています。中高生だけでなく小学生以下にも、基礎学力だけでなく社会で生きる力も、日本だけでなく海外にも」

ブラジル人の笑顔をヒントに見つけ出した「教育×テクノロジー」の組み合わせで、世界に挑む決意は、すでに固まっているようだ。

(ライター 石臥薫子)

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