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新型コロナの感染拡大で外出自粛が求められるいま、アバターロボットを活用することで開かれる新しい未来が見えつつあります。それは、何でもかんでもオンラインというのではなく、リアルへの原点回帰のみを唱えるものでもなく、オンラインとリアルが交錯する新しい社会です。そこには全く新しい事業創造の可能性があります。

それでは、アバターロボットは、どのような領域でブレークが見込まれるのでしょうか。

ANAホールディングスでアバタープロジェクトの開発を手がけた深堀昂さん(現アバターイン最高経営責任者=CEO)と梶谷ケビンさん(同最高執行責任者=COO)が話してくれたビジョンの中で、最も面白いと思ったキーワードの一つが「アバター人口」です。すなわち、アバターロボットが社会インフラになることで、街における人口の概念が変わることになります。

今回のアバター卒業式でも、式典の現場にいるアバターロボットとオンライン上で1時間ほど一緒にいると、もはや「そこに人がいる」という感覚になりました。しかも、同じアバターロボットに、最初の15分はAさん、次の15分はBさんがログインするわけです。ロボットは1体でも、その時々でそこにいる人が異なるという現象が起こります。つまり、ロボットを介して現場にいあわせる人の数が、現実にインパクトをもたらす社会になる。この考え方が「アバター人口」なのです。

アバター卒業式は国内外の注目を集めた(取材に応じる谷中教授)

アバター卒業式は国内外の注目を集めた(取材に応じる谷中教授)

アバターインは、アバターロボットを社会インフラ化する構想を掲げています。いたるところにアバターロボットが設置された社会では、利用者は世界中を瞬間移動するかのように振る舞うことができます。人口減少社会の日本では、定住人口、交流人口、関係人口といった議論が盛んですが、私から見るといずれも従来の延長線上の話であり、時と場所にとらわれない「アバター人口」という概念こそ注目に値すると考えています。

アバターロボットが活躍できるビジネス領域は幅広く、医療、観光、建設、芸術、宇宙開発など、枚挙にいとまがありません。そして、アバターロボットの導入によって、その領域が大きく革新できるか否かを見極めるポイントは、「オンラインを通じて、物理的に現場介入できる」ことの価値が存分に発揮される可能性を問うことに尽きるでしょう。

今、新型コロナの感染拡大によって世界は大変厳しい状況にあります。しかし、この逆境下にあるからこそ、新たな可能性が見いだされるはずだと強く思います。新しいテクノロジーを取り入れながら、突き抜けたアイデアを生み出し、ブレークスルーを手に入れる――。私が手がけたアバター卒業式は、卒業生の門出を祝いたいという純粋な気持ちとともに、この逆境をチャンスに変えるというメッセージを込めた布石だったのです。

谷中修吾
BBT大グローバル経営学科長・教授、BBT大大学院MBA教授。ソーシャルビジネスプロデューサー。東大大学院工学系研究科修了。外資・戦略コンサルを経て現職。地方創生イノベータープラットフォーム「INSPIRE(インスパイア)」代表理事。著書に「最強の縄文型ビジネス イノベーションを生み出す4つの原則」(日本経済新聞出版)。

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最強の縄文型ビジネス イノベーションを生み出す4つの原則

著者 : 谷中修吾
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 1,760円 (税込み)

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