ワンチームつくる思考ゲーム 勝敗は振り返りが分ける
第5回 経験思考

ワンチームになるためのゲームがある
昨年、流行語大賞となり、ビジネス界でも注目された「ワンチーム」。言うまでもなく、ラグビー日本代表が多様なメンバーをひとつにまとめるために掲げたスローガンです。そのために力を入れた取り組みの一つに「ファンゲーム」がありました(朝日新聞2019年10月21日)。
毎週のミーティングの前後にみんなでゲームをしてチームの結束を高めたというのです。たとえば、9月29日のアイルランド戦前にはやったのが「マシュマロタワー」です。
数人のグループに分かれ、マシュマロ、パスタ、ひも、テープなどを使ってタワーをつくり、その高さを競い合うゲームです。もちろん、それだけでチーム力が上がるわけはなく、大切なのは事後の振り返りです。やり方によって学習の深さがまるで違ってきます。
一番下手なグループは、いきなり「どうすればうまくいったのか?」を議論してしまいます。アイデアが出たとしても、思いつきの対症療法や借りものの答えにすぎず、地に足のついた改善になりません。やっては反省する、不毛な"モグラたたき"が繰り返されるだけです。
多少マシなグループは、「なぜうまくいかなかったのか?」と原因の分析から入ります。そのほうが本質的な改善策が見つかりやすいからです。
ところが、みんなの見解が一致しなかったり、原因追究が責任追及になったりする恐れがあります。下手をすると単なるダメ出しになり、関係性がかえって悪化することもあります。
経験を学習につなげる振り返り
一番望ましいのは、「ゲームの中で何が起こったのか?」と事実の特定から入るグループです。事実を共有せずに分析や改善を考えてもチームとしての教訓になりません。
たとえば、制限時間の直前でタワーが倒壊することがよくあります。それを見て、「やり方はほぼ間違っていなかった」と思う人もいれば、「そもそもやり方を根本的に誤った」ととらえる人もいます。同じ出来事を前にしても、そこから導き出す事実はかなり違ってきます。