オンライン時代のリーダー 3密でなく「3必」能力を
経営者JP社長 井上和幸
オンラインワークでの「ムードマネジメント」ができるか
先ほどのリクルートマネジメントソリューションズの「テレワーク実態調査」によると、管理職経験者の6割以上が「部下に必要なときに業務指示を出したり、指導をしたりしづらい」「チームビルディングができない」ことに不安を感じているそうです。
この気持ちはわかります。先日、話を聞いた、新型コロナ以前から全社リモートワークを実践してきたベンチャーの経営者は「我々も週に1度は全員(リアルの場に)集まることにしています」と述べていました。そのこころは、メンバー同士の信頼感・親近感をしっかり醸成、構築するためには対面でコミュニケーションを図ることが必須であるからということでした。
当社もですが、皆さんも、今回、急きょのリモートワークに切り替えて、うまく業務が回っているとすれば、それはこれまでリアルの場で培ってきたお互いの信頼感・親近感がある「信頼残高」を使うことができているからです。
そういう意味では今回の新型コロナ危機は、ミドル・シニアの皆さん、また経営者にとって、大きな転換点になるでしょう。メンバーたちとの信頼関係がなかった状況でオンラインコミュニケーションにシフトすれば、さらに関係は悪化します。
逆に今回の新型コロナ禍を機会にメンバー全員で危機感や次の時代への挑戦心、ビジョンやテーマを共有し、同じ目標に向かって一丸となって走り出す組織も多く存在しています。この意味でも、二極化が大きく進むことでしょう。
上記のようなチームビルディングを組み立て、「信頼残高」を蓄積したうえでですが、これからのミドル・シニアはメールやグループウエアなどのネット上、ビデオ会議などのオンライン上で、メンバーたちや社内外関係者たちの感情マネジメントができるオンラインコミュニケーション力が問われます。
メールやグループウエア内のチャットなどのテキストでも感情を乗せた文面が書けるか否か。相手の感情を察知し、臨機応変にSkype(スカイプ)やZoom(ズーム)などでショートミーティングが行えるかどうか。具体的にこういったオンラインコミュニケーション力が期待されるでしょう。
これからの転職市場で評価・採用されるミドル・シニアには、従来以上に精神的安定性やポジティブな姿勢、楽観性などが求められます。なぜなら、こうした感情的側面は、オンライン上でプラス面もマイナス面も増幅して伝わるからです。
そもそもはマネジメントやリーダーとメンバーが、お互いに何をすべきか理解しているならば、オンラインの方が効率はいいのです。オンラインのよさは簡潔に会話ができることなので、トピックスごとにかなり密度の濃い対話ができます。オンラインでは話が脇道にそれることも少なくなり、テーマについて真正面から話していても違和感や気恥ずかしさが起きにくい。リアルよりも互いの距離感が自然と近くなるので、突っ込んだ話がしやすいのです。おそらく、オンラインになったことで、これまで知らなかったメンバーの考え方やプロセスの新たな進め方などがみえてくるケースが増えるでしょう。
オンラインで「素」でメンバーとやりとりしていると、そこに自分の感情を素直に乗せられれば、あなたのオンラインリーダーシップは自然とよい形で発揮されていることに気がつくことと思います。逆に「これまで対面だったのが、オンラインになってしまったから、マネジメントも業務コミュニケーションもうまくいかなくなってしまって」という人は、そもそもマネジメントやリーダーとしての自分の役割は何だったのか(何だと思っていたのか)を、根本から見つめ直す必要がありそうです。
ウィズ・コロナ時代のオンラインリーダーシップについて、主要な3点を紹介しました。この3点を発揮する大前提として、オンラインワーク時代のリーダーシップには「自己管理能力」が不可欠なものとなります。規律正しく業務計画を立て、実行し、仕事のメリハリをつけ、しっかり息抜きやリセットもして健康管理も行える人でないと、ウィズ・コロナ、アフター・コロナ時代を生き抜くことは難しくなるでしょう。
そもそも「この新型コロナ禍はいつ終息し、元の世界に戻るのか」という問いを捨て去ることができるか否かが、今、ミドル・シニアの皆さんに問われています。アフター・コロナの後にやってくるのは、間違いなく「新世界」、新たな常態です。コロナ禍はいずれ終息(少なくとも沈静化)するでしょう。しかし、もうビフォー・コロナの世界に戻ることはないと思います。
※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。この連載は3人が交代で執筆します。
