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例えば、AからDまで一連の仕事を任せたとしましょう。AからBまでをこなしたとしても、何らかの理由でCやDの過程でつまずいてしまう。作業が滞っているにもかかわらず、次の仕事を振られると、先の作業での遅れを忘れ、新しい仕事に取りかかり、さらに新たな滞り生んでしまう――。こうしたことが続くと、本人も落ち込むようになり、心身の健康を損ねてしまいます。

能力を否定せず、いかに発揮してもらうか

あるコンサルティング会社に勤める30歳代女性の事例です。上司に言われるがまま仕事を引き受けた女性が、結果として処理できずに、自分の机の引き出しの中にため込んでいたという事例もありした。

前述したように、こうした人たちの多くは能力に欠けているわけではありません。むしろ、適切に指示すれば的確に仕事をこなしてくれることが期待されます。AならA、BならBと、1日の仕事量をその日のうちに仕上げられる範囲にとどめ、段取りを詳しく指示するとともに、作業の進捗を管理して、当日終えた仕事を回収する――。

上司や同僚は、その社員の能力を否定するのではなく、そこには、ADHDなどの発達の問題が関係しているかもしれないと察し、社員とよくコミュニケーションをとり、理解することが不可欠だと思われます。業務をわかりすいシンプルなものとすれば、作業の進捗改善も期待できるでしょう。

仕事の内容が変わることで思わぬ側面があわらになることもあります。

あるイベント制作会社に勤める40歳代男性の事例です。

現場の担当者として高く評価されていたことから、本社の制作部門に異動になりました。幾つもの新規企画の立ち上げを並行して手がければならず、指示を出さなければならない関係者も以前とは段違いに増えたそうです。そうこうしているうちに、仕事が滞るようになりました。

環境の変化がメンタル不調の原因にも

いま振り返るとADHDの症状があらわれていたのでしょう。心配した上司が「大丈夫か」と声をかけても「大丈夫です」と答えるばかり。その実、仕事は全て放置していたというのです。本人もつらかったのでしょう。ある日突然、出社できなくなってしまいました。

現場では仕事もできて、周囲からも慕われる優秀な人材だったのですが、それまでの比較的自由度の高い仕事から一転、高い規律性が求められる組織人としての働きを求められるようになり失調を来したようです。

環境の変化が期せずしてメンタルヘルス不調の原因となることも少なくありません。常日ごろから周囲と気軽に相談できる気の置けない関係を築いておくことが大切です。職場であれば、上司は部下の心の変調のサインを見逃さないよう、普段から十分なコミュニケーションをとるように心がける必要があるといえるでしょう。

※紹介した事例は個人を特定できないように一部を変更しています。

植田尚樹
1989年日本大学医学部卒、同精神科入局。96年同大大学院にて博士号取得(精神医学)。2001年茗荷谷駅前医院開業。06年駿河台日大病院・日大医学部精神科兼任講師。11年お茶の水女子大学非常勤講師。12年植田産業医労働衛生コンサルタント事務所開設。15年みんなの健康管理室合同会社代表社員。精神保健指定医。精神科専門医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。

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