ウィズコロナの時代 「乗り越える人」に必要な条件
『タルピオット』の石倉洋子氏×『シン・ニホン』の安宅和人氏

経営学者の石倉洋子氏(左)とヤフーの安宅和人CSO
一橋大学名誉教授の石倉洋子氏と、慶応義塾大学環境情報学部教授でヤフーCSO(最高戦略責任者)の安宅和人氏は、ほぼ同時期に、国の変革と人材育成をテーマとする本を著した。マッキンゼー出身で、日ごろから情報交換をしているという2人が、新型コロナから日本の課題と将来などについて語った。
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「アフターコロナ」は残念ながらしばらく来ない
石倉 先日、40~50代くらいの人たち約400人に、ズームでセミナーをやったんです。そこで、「コロナが収束しても、絶対元の生活になんて戻りませんよ」と言ったら、みなさんものすごくショックを受けていました。私は、みなさんがショックを受けていることの方にびっくりしたんですが。
安宅 「元の生活に戻りたい」「まもなく戻るだろう」と考えている人は多いですが、「アフターコロナ」は残念ながらそう簡単には来ない可能性が高い。我々は集団免疫の獲得にはほど遠く「感染者数が減ってきているからもうすぐ終わる」と思ったら大間違いで、それは単に「今回の波が終わる」というだけ。また世界のどこかから次の波がやってきます。おそらく1~2年は「ウィズコロナ」というべき状態が続きます。
「毎日出社したい」「同僚のデスクに囲まれたオフィスで仕事がしたい」「直接人に会わないと仕事をしている気になれない」といった、「元の生活に戻りたい」という欲求が強い人は、ウィズコロナの時代に対応するのは大変でしょうね。
逆に、「今は変化を起こすチャンスだ」と行動を起こせる人にはぴったりの時代になります。コロナは、そういう「分岐点」を強制的に発生させることになりました。

石倉洋子・一橋大学名誉教授
石倉安宅さんが書いた『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』(NewsPicksパブリッシング)も、私たちが書いた『タルピオット イスラエル式エリート養成プログラム』(日本経済新聞出版)も、コロナ前に出た本ですが、どちらも市場の変化や人材育成をテーマにしています。コロナのような「分岐点」に、日本や自らの将来を考えるうえで、良い材料になると思います。間に合ってよかったですね。
『シン・ニホン』は、私にしては珍しく、2日間くらいで夢中で読み終えました。これはすごい本だと思ったの。本の帯に「この国は、もう一度立ち上がれる。」と書いてあって、最初は「えー? 本当かしら?」と思ったんだけど(笑)
安宅 光栄です。今、変えられる未来は少しでもマシな方に変えたいです。
日本は十分にポテンシャルがありながらここまでのデータ×AI(人工知能)化の波の中であまりにも何もやっていなかった、もう伸びしろしかないですよ。やっただけよくなるという、世界でも珍しい状況下の国です。戦って負け続けたわけではなく、単に戦わずして不戦敗を喫していただけ。まずは戦いに参加していないという事実に気付くこと。そして、参加した方がいい。