転職活動も新常態へ移行 自分を売り込む5つの力
経営者JP社長 井上和幸

転職活動で自分を売り込める力は、セールス力にほぼ等しい 写真はイメージ =PIXTA
感染の第2波リスクに留意しながらの「ウィズ・コロナ社会」が始まりました。ウィズ・コロナ下の幹部採用市場は混沌とした状態が続くと思われます。転職活動に臨むミドル・シニアの皆さんには、応募先企業を的確に見極め、自分を効果的に売り込む転職力が求められます。そこで今回は、ミドル・シニアが「自分を望ましい形で売り込むための方程式」を紹介したいと思います。
私は、これまで長らくリーダークラスの皆さんの活躍、キャリア、転職を支援してきて、「自分を正しく売り込める人」は次の5つの力を発揮していることを突き止めました。それは観察力、判断力、説得力、行動力、継続力の5つです。
ちなみに、そもそもこの前段として私は、エグゼクティブサーチ(幹部人材紹介)や人材コンサルティングで2万人を超える経営者・経営幹部のキャリアを見て、支援してきて、経営者には基本ソフト(OS)として5つの力が求められると体系化しています。
経営者に求められる5力は、次のような足し算・掛け算で示せます。
このOSのもとで、企画をしたり、それを売り込んだり、プロジェクトを統括・推進したり、チームメンバーたちを動機付けたり、あるいは時には危機対応を計ったりしてビジネスを動かしていくのがリーダーの役割・仕事です。このそれぞれの力に、それぞれの方程式があります。今後の連載で、折々紹介していきます。そのなかでも転職においては、セールス力にほぼ等しい力を発揮することが有効なので、今回、その部分を切り出して紹介します。
応募案件を正しく「観察」し、「判断」する方法
「自身を正しく売り込める5つの力」のうち、まず最初の2つ、「観察力」+「判断力」についてです。
転職活動において、特に市況が悪くなった時期に、自身のアドバンテージを見つけられていない人が共通して陥る行動があります。それは、「相手(この場合、応募先企業)を見ずに、闇雲に自分をPRする」ことです。
具体的な行動でいえば、掲載されている求人情報に、片っ端からエントリーしまくる。面接において、面接官が何を聞きたがっているのかを確認せずに、時には無視して、マシンガンのように自分のことを自分の話したいように話す。こういった振る舞いです。
情熱があるといえば、聞こえがいいかもしれませんが、営業と一緒で、受け手からすれば、いい迷惑です。「欲しくもないものを押し売りされている」ような状況と一緒です。これでは応募企業から興味を持ってもらうどころか、早々に疎まれて終わりです。
「観察力」とは、相手を「取材」する力です。情報収集、ヒアリングを行い、相手のニーズをまずは正しく見極めることが不可欠。私は日頃のキャリアコンサルティング、転職面談の場などで、「応募先企業をデューデリジェンス(資産査定)してください」という言い方もよくします。まず、相手企業は今回、どのような状況、課題があって、このポジションの人材を外部から採用しようとしているのだろうかということを、可能な範囲で正確に把握することが、望ましい転職活動へのスタートラインに立つ第一歩です。