在宅では見えづらいチーム目標 雑談で「個人」感じて
オンライン時代のマネジメント術(上) オイシックス・ラ・大地 人材企画室室長 三浦孝文氏
チームには、程よい緊張感が必要なときと、余白が必要なときがあるものです。目指すべきゴールやそこに至る道筋、必要な情報を「見える化」しておくことで、自分たちが今どこに向かって日々の活動を行っているのかを集約しておくことが大切です。
特に、個々人が日々ディスカッションしたりする際に用いている資料(ドキュメントやスプレッドシート、スライド等)は、それぞれが作成し、自身のPC上だけに整理されていることも多いと思います。
このような情報を整理して、きれいに整え、チーム全体で常に確認できるように見える化しておくことも、チームマネジメントでは必要な要素の一つとなります。必要なときに必要な武器が取り出せないようでは、チームでうまく戦うことはできません。
定量的な事実と定性的な感情の両方を大切に
生鮮EC(電子商取引)の宅配事業を手掛ける当社にきてから、「FACT(事実)は何か」ということに向き合うことが非常に増えたように思います。そして、HR(ヒューマンリソース)という私の立場では、社員や外部の求職者と向き合う機会に対しても同様のことが言えるのです。
チームをマネジメントする上で、私がとても大切にしているのが、定量(事実)と定性(感情)のバランスです。リモート×オンライン中心で働くようになり、物理的な姿として働いているメンバーを目にすることは減っていますが、だからと言ってマネジメント側が細かく注文をつけたり指示したりしていたら、メンバーもやりにくくなりますし、力を発揮できません。
だからこそ定量的な事実である「数字」を見ることは大切だと思っています。どれくらいの労働時間で、どれくらいのアウトプットを出しているのか。残業が増えているのか、減っているのか。勤務の開始時間に大きなブレはないか。勤務時間のログと違う時間にメール返信したり、資料を作ったりしていないか。
こういったことは、マネジメント側が注視すれば、すぐにわかることです。
一方で、定量だけでなく、定性的な感情を捉えることも欠かしてはいけないと考えています。定量的に出た数字は、あくまで表層的なものにすぎません。その裏に潜む背景、個々人がもつ、定性的な部分を捉えにいく必要があります。
リモートになってから、就業時間は変わらないものの、育児や介護に向き合う時間が増えたという事情を抱えているメンバーもいます。そのような中で、以前とは違った感情をもって仕事に向き合っているはずで、それに丁寧に向き合わずして、マネジメントは務まらないと思っています。
オンラインでもオフラインでも、基本的にやらなければならないことは同じです。ただ、オンラインの場合は、チームにおける目標設定をより明確にしておく必要があると思います。これまでは、「オフィスにくる」ということだけで、同じ方向を向けるところがありました。人の動きを見たり、ちょっとした雑談をしたりすることで得られる情報から、みんながどの方向に向かっているかを、何となく理解できたはずです。しかし、オンラインではそれが見えません。ゴールを見える化し、目標設定を明確にすることが、オンライン時代のチームマネジメントには必要不可欠なことだと思います。
1987年大分県別府市出身。2010年関西学院大学を卒業、モバイル広告会社D2Cで社会人生活をスタートし採用全般を担当。14年、クックパッド採用グループに中途入社、子会社の独立を見届けた16年末に退職。17年1月より現職。社外では、HRコミュニティー「人事ごった煮会」の発起人、さとなおオープンラボ7期生、adtechtokyo 2020 公式スピーカー。