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『おうむの夢と操り人形』には、実現したい未来がある

作家藤井太洋(1971年生まれ)の人生は、『火星の人』の作者アンディ・ウィアー(1972年生まれ)ととてもよく似ています。技術者として働きながらネットでSF小説を発表し、Amazonキンドル版の自己出版で成功を収めました。2人ともが、「セルフ」×「ネット」でキャリアをスタートさせたSF作家なのです。

『おうむの夢と操り人形』

『おうむの夢と操り人形』

藤井太洋が描く近未来SFは、あまりにリアルです。日本、北朝鮮、米中を舞台にした電子戦を描いた『オービタル・クラウド』もそうでしたが、今まさに起きようとしている未来に、彼なりの独自の答えを与えています。『おうむの夢と操り人形』(2019)でいえば、ヒトとAIとの関わりの本質は何か、高度なAIは本当に必要なのか、ロボットにヒトが感じる親近感と拒絶感はなんなのか……、が問いでした。

時は2023年。この物語は、機能不足でちょっと邪魔者扱いされるようになった人型ロボット「パドル」(描写及び機能・機構的にはソフトバンクのPepperとかなり似ている)のお話から始まります。東京オリンピック・パラリンピックで、外国客相手の案内役を終えた後は役目がなくなり倉庫に山積み、だったそうです。しかし「コミュニケーションしかできない」はずのパドルには、意外な使い途がありました。モノが持てなくても、階段を昇れなくても、その「ヒトのような存在感」こそが価値だったのです。そこから急展開!

この作品は、文庫版でもたった47ページの小品です。しかしそこには、ぜひ実現してみたい未来があります。ちょっとだけ、人間にとって厳しい話もありますけれど、ね。

今回は紙面の関係で近未来SFの紹介だけになってしまいましたが、『戦略読書〔増補版〕』にはもっと先の未来や過去を描いたSFだけでなく、ビジネス書から歴史書、心理学、哲学の本まで、さまざまな分野の本(やマンガ)の紹介があります。それらも併せてお読みください。

さて次回は、イマドキのキャリア論を少々おさらいしておきましょう。このVUCA(不安定・不確実・複雑・曖昧)な時代に絶対確実なキャリア形成法などあるわけもありませんが、だからこそ大切なポイントもあるはず。

 三谷宏治
 KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授。
 1964年大阪生まれ、福井育ち。東京大学理学部物理学科卒業後、BCG、アクセンチュアで19年半経営戦略コンサルタントとして活躍。92年INSEADでMBA修了。2006年から教育分野に活動の舞台を移し、年間1万人以上に授業・講演。無類の本好きとして知られる。著書に『経営戦略全史』『ビジネスモデル全史』『新しい経営学』など。『お手伝い至上主義!』『戦略子育て』など戦略視点での家庭教育書も。早稲田大学ビジネススクール・女子栄養大学で客員教授、放課後NPOアフタースクール・認定NPO 3keysで理事を務める。永平寺ふるさと大使、3人娘の父。

戦略読書 〔増補版〕 (日経ビジネス人文庫)

著者 : 三谷 宏治
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 1,100円 (税込み)

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