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――コロナは日本人の働き方を大きく変える一方、日本経済に多大なダメージをもたらしています。

経済対策として今必要なのは、資金繰りに困っている企業や事業者にマネーを供給すること。そのために日銀は国債や社債、CP(コマーシャルペーパー)の買い取りや中小企業への融資促進のための資金供給を進めています。

政府が打ち出した1人10万円の特別定額給付金も、本来はマネーをできるだけ早く届けるための政策でしたが、オンライン申請の処理に手間取り、郵送しか受け付けないという自治体も出てきた。日本の行政の情報処理力の低さ、生産性の低さが改めて浮き彫りになりました。

――業績悪化懸念が強まる一方、足元(5月下旬)の株式市場は、緩和マネーや経済活動再開への期待で日米とも上昇基調にあります。

理解に苦しむ状況です。株式市場は経済のV字回復を織り込んでいるのかもしれませんが、感染者数が一時的に減ってもワクチンができない限り安心して経済活動再開はできない。株式市場の楽観は、実体経済や社会と大きくかけ離れているように思います。

金融緩和といっても、日銀や米連邦準備理事会(FRB)が買うのは国債や社債、CPであり、株式そのものを大量に買うわけではありません。「中央銀行がリスクを引き受ける」とは言っていないのです。私には、株式市場がそこを誤解しているように見えます。その誤解は、いずれ剥がれ落ちるリスクが高いと考えています。

――経済への打撃を最小限に抑えながら、コロナ後に持続可能な社会へ構造転換するためには、どんな政策が有効と考えますか。

大きな経済的ショックなしにこの危機を通り抜けるのは無理でしょう。壊れるものは全て壊れ、生き残る力があるものだけが残るしかないと思います。

コロナが壊した社会の仕組みは、元には戻りません。この先どう生き残るかを、ビジネスマンも経営者も真剣に考えなくてはならない。この危機を乗り越えるためにも、やはり学ぶことが重要なのです。

『「超」独学法』
野口悠紀雄著/KADOKAWA/840円(税別)
 大学で応用物理学を学びながら、独学で国家公務員試験の経済職に合格して大蔵省(現・財務省)に入省。その後経済学者となった著者は、独学こそ忙しい社会人にとって最も効率的な勉強法だと指摘する。変化する時代の中で学び続けることの重要性を説きながら、独学のメリットや最初の一歩の踏み出し方、学ぶべきテーマの探し方やカリキュラムの組み立て方などを具体的に解説。仕事で必要な知識や技術から外国語まで、独学によってスキルを磨き、成長するためのノウハウを惜しみなく提示する。
のぐち・ゆきお
 1940年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、64年に大蔵省(現・財務省)入省。72年米エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、米スタンフォード大学客員教授などを経て、2017年から早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問。一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論。『財政危機の構造』『バブルの経済学』『ブロックチェーン革命』など著書多数

撮影/高山透 取材・文/佐藤珠希

[日経マネー2020年8月号の記事を再構成]

「超」独学法 AI時代の新しい働き方へ (角川新書)

著者 : 野口 悠紀雄
出版 : KADOKAWA
価格 : 924円 (税込み)

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