社員を「部品」にしない 伸びようとする力を引き出す
ロート製薬 山田邦雄会長(下)

ロート製薬会長 山田邦雄氏
ロート製薬の山田邦雄会長は「自分自身の心の壁が成長を妨げる」と考え、若手にも責任のある役割を与えたり、やりがいを意識させたりして成長を促してきた。常に学ぶことを忘れずに、若者には未来を見据えて、中高年世代には会社の外に飛び出して活躍してほしいと考えている。一人一人がやりがいをもって働き、生きていける仕組みをつくり上げようとしている。
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――人材育成で大切にしていることはありますか。
「成長を妨げる一番の障害は、その人自身の心理的な壁だと思っています。そのため、心の壁をできるだけ取ってあげられる機会をつくることを意識しています。自分自身に蓋をして、無理だ、自分にはできない、という思考になってしまう人が多いのです」
「最近の日本の若い世代を見ていると、世界で活躍している人がぞろぞろいます。ただ、残念ながら、日本人は集団になると途端にダメになるような気が個人的にはしますね。特に大きな組織に入ると、部品になってしまうのです」
「当社の杉本雅史社長が面白いことを言っていました。人材の成長には3つの場が大事だと。『修羅場』『土壇場』『正念場』だそうです。これには非常に納得しました。やっぱり、ちょっと厳しい状況に追い込まれたときに人間はぐっと伸びる、ということがあります。若手でも責任のあるポジション、例えばプロジェクトのリーダーなどに任命して、場をつくってあげることを心がけています」
「もう一つは、何のために仕事や努力をしているのかを自覚してもらうことです。これだけ色々な社会課題が山積みしている中で、課題を解決するために頑張っているという気づきを持ってもらうのは、とても重要です。場をつくることが外発的なチャンスとしたら、自覚してもらうことは内発的な情熱を共有するということです。そうすれば人は、伸びる力を一人一人が持っているから、自然に成長していけると思います」
――社員に意識してほしいことはありますか。
「ロート製薬の経営理念の中でも触れていますが、いくつになっても学び続けるということは大事です。常に学び続けるというのは、世代を超えた共通の課題と考えています。私自身も学び続けているつもりです」