変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

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キャップストーンの実際の1年間の流れはこうです。例えば、「電気自動車は部品が軽くなれば、車体も軽くなり、電池の負荷が減る。しかし、車体の強度はそのままを維持したい。どう解決するか?」という課題を選んだとしましょう。

学生はまず企業を訪れ、軽量化の背景を調べるとともに、部品、素材、コストなどを緻密にヒアリングします。そのうえで、教員のサポートも借りながら、力学的な耐久力向上や他の部品とどう組み合わせるかといった工学的アプローチも加味し、大学の工房を駆使して試作に励みます。さらに、実際に企業で製品化する場合を想定し、量産化するには? デザイン面は? 環境負荷は? といったことも検討し、改良・改善を繰り返します。教員だけでなく、企業のエンジニアも加わって議論と試作が重ねられ、年度末に最終提案をプレゼンするというのが一連の流れです。

3年次は、プレキャップストーンとして初級編を実施。4年次はさらに深化し、ときには課題を与えられるのではなく、自ら提携企業の現場で課題を見つけ、解決策を考えていきます。

キャップストーンは、海外、特に米国の大学では実施例が多く、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)などのトップスクールでは、必ずといっていいほど導入されているといいます。永守氏が求める「社会で活躍できる実践力のある人材」を育てるための、まさに大きな武器といえるでしょう。

目指すは「人材育成の産学連携」

驚いたのは、参画する企業側にも本気を求めることです。単に課題を出し、半年後にプレゼンを受けるだけといった形式的なものではなく、毎週のように学生側とコミュニケーションを取りながら進めるなど、大学と企業が一緒になって人材を育てることを重視しています。従来、多くの企業は「こんな学生が欲しい」と求めるばかりで、社外において人材育成に積極的に取り組むことは少ないのが現状でした。同大学では企業と共に、人材育成における"産学連携"の新しい形をつくろうとしているのです。

本書では、今回一部紹介した京都先端科学大学の画期的な人材育成の取り組みや、そこから見える永守氏の人材論・人材育成論を詳説しています。さらに、いかにして大学組織を変革していったのかという、永守氏の組織改革の本質にも迫りました。大学改革の話というとビジネスの現場には関係ないと思われがちですが、"勝てる組織"をどうつくっていけばいいのか、組織の中で自分がどう動き、人を動かすために何をすべきか、これから世界で戦っていくうえで必要な人材とは何か、若者にどう接すべきかなど、ビジネスパーソンに役立つヒントが詰まっています。

また、本書の巻末には、永守氏が30分にわたって熱弁を振るった2019年の入学式挨拶の要約も掲載しています。多くの若者の心を動かした熱いメッセージをぜひご覧ください。

(日経クロストレンド編集 森岡大地)

永守重信の人材革命 実践力人材を育てる!

著者 : 日経トレンディ
出版 : 日経BP
価格 : 1,870 円(税込み)

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