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資本主義の中心、米国企業の大転換

この宣言は、顧客や従業員、取引先、地域社会、株主という多様なステークホルダーを尊重し、長期的な企業価値向上に取り組むことを意味します。同団体は1978年以降、定期的にコーポレートガバナンス(企業統治)原則を公表し、97年からは「企業は主に株主のために存在する」と明記していました。つまり「株主第一主義」を掲げ、株価上昇や配当増加などを優先してきたわけですから、2019年の宣言は「ステークホルダー資本主義」への大変革を打ち出したことになります。同時に、「企業は自社の利益の最大化だけでなく、パーパス(企業の存在意義・目的) の実現も目指すべきである」という姿勢を表明したことにも注目すべきでしょう。

「これからは社会価値の時代だ」。JPモルガン・チェースのダイモンCEOがこんなことを言うようになったのか。私にはとても印象深く思われます。というのも、ダイモン氏をめぐっては、過去にこんなエピソードがあったからです。リーマン・ショック後のこと。ある会合でゼネラル・エレクトリック(GE)のジェフリー・イメルトCEO(当時)がダイモン氏に「リーマン・ショックに関して、あなたはどういう責任を感じますか」と尋ねる場面がありました。これに対して、ダイモン氏は「私たちは法令順守しており、責任はない」と言い切ったのです。私は「あれほど大きなインパクトを世界中に与えておきながら、法律を守っていれば責任がないという態度は一体、どういうことなのか」と、あきれた記憶があります。

今でも当時のやりとりを覚えているだけに、このたびのビジネス・ラウンドテーブルの方針転換や、ダイモン氏の変節ぶりには感慨深いものがあるのです。米国企業の経営手法にもろ手を挙げて賛成することはできませんが、見習うべき点として「新しいことをやる」「変わる」と言い出したら、本当に実行することが挙げられます。実際に、一気に「ステークホルダー資本主義」を実現してしまう可能性もありそうです。

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