CMでは伝えきれない ネスレが短編映画に注力する理由
ネスレ日本 専務執行役員CMO 石橋昌文氏
「テレビCMは認知度向上に最も効率的なメディアだと思います。しかし、『ネスカフェ』にしろ、『キットカット』にしろ、当社のブランドの認知度は非常に高い。必要なのは、ロイヤルティーをより高めたり、エンゲージメントを高めたりするコミュニケーションです。となると、15秒あるいは30秒のテレビCMで伝えられることは限られてしまう。CMを否定するわけではありませんが、ケース・バイ・ケース、必要に応じて使い分けています」
エンゲージメントを高め、売り上げにも貢献
――これまでの取り組みで、どのような成果が得られましたか。
「これまでに44作品を製作しました。累計の視聴者数は4700万人にのぼります。リーチだけではありません。作品を格納した当社のサイト『ネスレアミューズ』を訪問した消費者と、そうでない人を比較すると、当社製品の購買金額に1.8倍の差が出ました。訪問した人をみても、訪問後は購買額が20%ほど増えたという調査結果もあります。顧客とのエンゲージメントを高め、それに伴い売り上げにも貢献することができていると考えています」
――消費者と直結していることのメリットをどのようなところに感じていますか。
「やはり、いろいろな声を直接聞けることにあります。当社サイトの会員制サービスの登録者数は約670万人にのぼります。そのうち約300万人とは直接コミュニケーションをとれるかたちになっていて、購買データと関連づけることもできます。もっとセグメント分析をして、細かく切り分けてコミュニケーションができるようにしたいと考えています」

最新作「この場所の香り」(榊原有佑監督)では、「ネスカフェ アンバサダー」にまつわる心温まる2つの物語を描いた
――今後、デジタルマーケティングをどのように展開していこうと考えていますか。
「デジタルマーケティングを特別視して進めようとは考えていません。マーケティングを進めていくなかで、それがオフラインなのかオンラインなのか、トラディショナルメディアなのかデジタルメディアなのか、やるべきこと、キャンペーンの目的に合ったコミュニケーションチャンネルやツールは何かを考えながら選択していくだけです」
「キャンペーンのターゲット集団がどの年齢層なのか、どのようなメディアを好むのかを考慮しながら、適切に予算配分して投下する、という点では以前から変わっていません。かつては4媒体しかなかったのが、選択の幅が広がったというだけの話です。メディアが増えればそこにあるコンテンツも当然変わってきます。それぞれ適切なコンテンツを適切なメディアで展開していくということです」