模擬国連は「知の格闘技」 人心掌握術学ぶ西大和学園
西大和学園中学・高校(中) 教育ジャーナリスト・おおたとしまさ
生徒C 模擬国連には賞をとるという目的もあるので、いろいろなひとの思惑が結構ごちゃごちゃドロドロするんですよ。そのなかでリーダーシップを発揮するというのはなかなか難しいんだよね。それぞれの国のメリットを通さなければいけないし、押しすぎてもだめだし。
生徒B 私はその押したり引いたりというのが苦手なんです。でも一歩引いてみんなのやりとりを見ていると、準備の仕方だとか議論の進め方だとか大事にしている信条だったりとかにそれぞれの個性が表れていて面白いです。自分とはまったく違うどこかの国の大使になるからこそ、そのひと本来の個性が出るのだろうと思うんです。

ディベートの作戦を練る
生徒C 実際にどこかの国の大使という立場になって、国益を背負って真剣に議論をすることで、ニュースを見ているだけではわからない国際社会の力学が手に取るようにわかるのが模擬国連の醍醐味だと思います。
生徒D 私は他校との交流が楽しいです。ガチで模擬国連をやっているひとたちは国際的な条約とかを読み込んでいる量もものすごくて、その知識量に驚かされます。灘とかだとオーラがすごいですよ。「俺らは国連のこと知ってるんや!」みたいな(笑)。
――いま、いちばん気になる社会問題は?
生徒B 私は性差別に関心があります。このまえ、ビデオ会議のZoomでネパールのひとがネパールにおける女性差別について講義してくれました。でも、ジェンダー・ギャップ指数ランキングでは、ネパールよりも日本のほうがずっと下だということを知って、びっくりしました。「日本、あり得なくない?」みたいな。
生徒C なんといっても米大統領選ですね。毎日米国のニュースをチェックしています。なんだかんだ言ってやっぱり世界の覇権国家のトップですから、世界中のひとの生活に関係しますし、模擬国連の前提知識にも大きな影響を与えます。
さすが、人前で話すことには慣れている。質問に対して間髪入れず答えが返ってくるし、他人の話を引き継いで意見を述べるのもうまい。そしてなにしろ成長意欲が非常に高い高校生たちだった。西大和学園の校風がそうさせるのであろう。
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創立は1986年。2020年には東大に53人、京大に52人、国公立大医学部に46人の合格者を出した。東大・京大・国公立大学医学部合格者数の直近5年間(2016~2020年)平均は123.8人で全国8位。卒業生の衆院議員の田野瀬太道氏は、西大和学園創立者の田野瀬良太郎氏の次男で、同理事長・田野瀬太樹氏の弟。