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「逆算思考」でキャリアに保険をかけていく

自分は、人生でこの先、どれぐらい働くことができるのかが可視化できると、時間という財産の価値がいくらか見えてくると思います。人生で最も資産価値が高いものは、高級車でも家でもなく、自分の時間です。この時間をどう有効に使えるか次第で、人生そのものの充足感が変わってくると思います。

時間の使い方が下手な人は、受動的に生きることで時間を浪費してしまう人です。特に、会社や環境を起点として生きることは後悔を招くおそれがあります。転職に動いた人たちも、これまではアクションを起こさざるを得なくなった人たちが、ほとんどだったのです。仕方がないから転職を考えた、と。

自ら進んでキャリアをデザインする「自分起点」で動こうとした人よりも、受動的なアクションのほうが圧倒的に多かったのです。そして、受動的なアクションで転職しても、結局はうまくいきません。迎える企業側は、自分の意志で来てくれる人を求めているからです。

そもそも自分の人生を自分の意思で決める自己決定は、極めて重要です。なぜなら、それが幸福度を大きく左右するからです。自分で選択し、決定することが、充足感につながる因子だからです。しかし、現実には自分で決めているようで実際は流されているだけの人がいかに多いことか。

学生時代の就職で、「内定をもらう」ことが目的化して、あいまいな意思決定をしてしまった人。入社後の異動や転勤で不本意なことを受け止め続けた結果、自分のメインキャリアがわからなくなってしまった人。

毎日のように多くのミドル世代の人たちに会って話を聞いていると、よく聞こえてくるのは、「他責」の言葉。会社の業績が厳しくなったから動かざるを得なくなった。上司と合わないからもうこの会社は嫌だ。本意でない部署に会社から異動を命じられた……。

社会的な地位や年収がいくら高くても、人生の重要な意思決定を誰かに預けてしまったということは、後々、充足感を得にくい背景・要因となります。

また、自分で意思決定をすることなく、会社が決めた命令を受け入れざるを得ないと思い込んで、受動的な立場を続けてきた人は、どうやって自分の時間をデザインしていけばいいのかさえもわからなくなってしまうことがあります。

大切なことは、自分の人生の時間に対して、自らイニシアチブを持って意思決定することです。

メジャーリーグで活躍したイチローさんは、プロ野球時代に3割8分5厘(1994年)という打率成績を周囲から褒められても、何とも思っていなかったといいます。理由は、イチローさん自身がその数字を目指していたわけでは全くなかったからです。むしろ自分にいら立ちを感じ、4割超えを本気で目指していたともいわれます。その結果が3割8分5厘だったわけです。イチローさんは自分の可能性から逆算した目標を自分で定めていたのでしょう。

ぜひ与えられた能力と時間を最大限有効に使うために、仕事人生の残り時間から逆算して、自分の時間をどう使っていくのかを検討してみてもらえればと思います。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。この連載は3人が交代で執筆します。

黒田真行
ルーセントドアーズ代表取締役。日本初の35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」を運営。2019年、中高年のキャリア相談プラットフォーム「Can Will」開設。著書に『転職に向いている人 転職してはいけない人』、ほか。「Career Release40」 http://lucentdoors.co.jp/cr40/ 「Can Will」 https://canwill.jp/

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