目利き編集者が厳選 企業経営めぐる欧米最前線の思考
紀伊国屋書店大手町ビル店
その関心とは、「どうすれば日本人の意識や行動が、環境に合わせて進化していけるか」ということだ。日本経済のここ30年の停滞、これを突き破るカギを企業経営を切り口に欧米の研究者の思考から探り当てようというのが本書の企図だとわかる。テーマに沿いながら多くの識者が日本企業の強みや弱みに言及しているのは、その思いゆえだろう。自分の仕事から気になるテーマを見つけて思うままに読めば、前に進むヒントが得られるに違いない。
冒頭に入山章栄早稲田大学ビジネススクール教授によるガイダンスがつく。17人を大御所と気鋭、アカデミアと実務派という2つの軸で4象限にマッピングした解説で、学界での立ち位置が一目でわかる。
「トランプ本など時事的なテーマの本は動きが鈍いが、経営学に関する本は意外によく売れている」と同書店でビジネス書を担当する西山崇之さんは話す。新型コロナウイルスの感染拡大以後の厳しいビジネス環境が、現場からでは見えてこない手がかりを求めているのかもしれない。
コロナ民間臨調の報告書が2位
それでは、先週のベスト5をみていこう。
力強い新刊が出てこないためか、1位には10年刊の問題解決の本質を説いたロングセラーが入った。2位は、新型コロナ対応・民間臨時調査会の調査報告書。当時の首相、官房長官、厚労相、コロナ対策相をはじめ、関係する官僚や専門家会議の委員ら計83人への聞き取りを実施、コロナ危機への対処を総括した労作だ。3位は、定番の企業研究ムック。2つの経営論が4位、5位に続く。4位が今回紹介した1冊、5位は前回「題材は過去記事だけ 経営センスと大局観を鍛える方法」で取り上げた経営センスの鍛錬本が入った。
(水柿武志)