ルービックキューブ40年 多面的面白さでブーム再点火
メガハウス トイ事業部 藤島勇太氏(上)
「リベンジ組」の大人が参戦
40年前の小中学生が今では40~50代を迎え、子供におもちゃを買い与える立場になってきた。80年当時のブームを知る祖父母世代も現れている。「電気を使わないアナログな遊びを子供や孫に楽しんでほしいと考える親や祖父母は少なくない。そうした層に2世代、3世代での遊びを誘ううえで、脳へのプラス効果は追い風になる」と、藤島氏はエビデンスを得た意義を語る。シニア層にとっては手先と脳の両方を刺激する効果が見込める。扱い方が簡単なので、子供や孫と同じ土俵で競い合えるのは、家庭内コミュニケーションにも有益だ。「家で一緒に過ごす時間が長くなった分、ルービックキューブをきっかけに絆を深めてもらえれば」と期待する。
昔は6面をそろえきれなかった大人層が子供や孫につられる格好で、再チャレンジするケースが増えているという。「今は動画や攻略書があり、再チャレンジを成功させやすい」(藤島氏)というところもリベンジ組の背中を押しているようだ。ビギナー向けの派生商品も用意されている。ベーシックな「3マス×3マス」よりも小さい「2マス×2マス」は入門編にうってつけ。「2×2を使って、完成させられるという自信をつけてから、ステップアップしていくのがおすすめ」(藤島氏)。さらに上を試せるよう、4×4も含めた3種類セット商品の「ルービックキューブ ステップアップDXセット」を10月に発売した。マス数の異なる複数のキューブを収めたセット商品はシリーズ初だ。4×4の難易度は3×3の100万倍ともいわれていて、「スキルに応じて、家族がそれぞれに楽しめる」という。
40周年にふさわしい取り組みとしてメガハウスが力を入れるのは、ルービックキューブの文化的な側面のPRだ。シンボリックな企画がハンガリー文化センター(東京・港)で11月11~19日(土日は除く)に開催する「ルービックキューブ40周年展」だ。歴代商品を展示するほか、キューブ1600個を使ったモザイクアート、日本の加工技術で製作した世界最小のキューブも披露。こうした企画が成り立つのは、「コレクションアイテムとしての人気が高いから」(藤島氏)。会場には自慢の所蔵品を携えて現れるコレクターが相次いだそうだ。

「極小ルービックキューブ」は1円玉より小さい
展示された「極小ルービックキューブ」の製作には、金属精密加工を得意とする入曽精密(埼玉県入間市)が協力した。縦・横・高さの各辺が0.99センチメートルと1円玉より小さいが、実際に遊ぶことができる。価格は18万円(税別、送料込み)と値が張るものの、「海外からの問い合わせが相次いでいる」という。今年は既に40周年記念商品として総メタリックのタイプを発売済み。過去には九谷焼のタイルを用いたモデルも企画した。「熱心なコレクターが多いので、コレクションアイテムにふさわしい商品はこれからも企画していきたい」(藤島氏)という。
競技・スポーツ、インテリア雑貨、家族コミュニケーション、脳トレ、そしてコレクションと、多彩な「6面体」が長寿ヒットの理由だろう。「不惑」の40歳を迎えたルービックキューブは「子供のおもちゃ」の枠を超えた、奥深い多面体へと進化を重ねつつあるようだ。