求む「素直に向き合える人」 巻き込み・突破力に期待
人事担当者に聞く サイバーエージェント

サイバーエージェントの石田裕子専務執行役員は「素直でいい人」を採用基準に挙げる
コロナ禍で中途採用を縮小する動きがあるものの、長期的には企業の人手不足を背景に人材流動化のうねりは続くとみられる。企業はどういった基準で選考しているか、どういった人材であれば活躍できるとみているか。今回はサイバーエージェントの専務執行役員で人事を担当する石田裕子さん(39)に話を聞いた。
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――中途採用の状況について教えてください。
「当社は中途採用について、人事部で一元的な目標を設定していません。各事業部がそれぞれ人員計画を立て、全社的な人員規模を鑑みたうえで人事部が最終決定し、その都度採用する形式をとっています。2018年までは中途採用で年間500人程度とハイペースで採用していたのですが、19年1月、17年ぶりに業績予想を下方修正したことをきっかけに、軌道修正を図りました」
「すぐに外部人材に頼るのではなく、ジョブローテーション(異動)を増やし、まずは社内での適材適所の実現を目指すよう改めました。現状、中途採用については、既存社員ではカバーできない専門職や新規事業立ち上げに向けて必要な場合など数を絞った形で実施していますが、それでも採用数は年間100人超のペースで推移しています」
――中途採用で重視する基準は。
「最も重視しているのは、一緒に働きたいと思えるか、つまり、カルチャーが合うか(カルチャーフィット)です。当社のカルチャーは『市場環境や事業の変化に適応しながら能力を発揮でき、事業や組織に対する貢献意欲がある』ことですが、どんなに優秀でスキルが高くてもこのカルチャーに合わない人を採用することはありません」
「カルチャーフィットを測るのに正解はなく、採用側にも経験が求められます。面接では『壁にぶつかったとき、どのように乗り越えたか』などの質問を通じ、どういったマインドセットの持ち主かを確認するようにしています」
「もう一つの採用基準は、『素直でいい人』かどうか。これは、社長の藤田晋が創業したときからのモットーです。物事を素直にあるがままに見られる人、自分の良い点も悪い点も素直に受け止め向き合える人、という意味で、予期せぬ変化に直面しても、それを素直に受け止め、新しい状況で自らの能力を発揮できる人が『素直でいい人』だととらえています」
周りを巻き込み、目標に進む人が理想
――どのようなタイプの人材が活躍しやすいのでしょうか。
「『言うことは壮大、やることは愚直』というのが、活躍する人のキーワードだと思っています。夢や目標に向かって、自らの意志で走りながらチャレンジしつつも、愚直に足元の仕事を実行できる人が活躍しています」
「周囲を巻き込んで目標達成のために仕事を進めていける人、いい意味での『巻き込み力』が高い人も力を発揮している印象です。当たり前ですが、一人で成立する仕事はありません。周囲の人と信頼関係を築いた上でチームとして成果を出す必要があります。当社はチームでパフォーマンスを上げることを重視しており、自分から率先して上司や同僚を巻き込み、目標に向かって進んでいける人が理想です」