「空飛ぶバイク」開発の経営者 筑駒で出合う自由奔放
片野大輔・A.L.I.テクノロジーズ社長(上)
入学早々、アウエー感が一杯でしたね。1学期の期末テストの結果も悲惨で、後ろから5番目。恥ずかしながら、期末テストの平均点を超えたのは中3の時に1度しかないのです。それも両親から(1999年に)自治体が発行した「地域振興券」をプレゼントしてやるからと言われ、がんばっただけ。ニンジンをぶら下げられたわけですが、自分でもやればできると少し自信になりました。
ただ、筑駒では成績が上位でなくてもそんなに劣等感を持つ生徒はあまりいなかったと思います。学校側も成績上位者を公表したりしてあおらないし、そもそも国英数全科目でトップなんて生徒はいない。数学トップでも、国語は下位という風に特定の科目は大学院生並みの知識があるけど、それ以外の科目はパッとしないという生徒が多かったのです。僕も物理は学年で上位でしたが、文系の科目はかなりひどかった。
筑駒は「勉強系のオタク集団」と言い切る。
ただ、高校から入学してきた河原亮くんとの出会いは衝撃的だった。中学まで香港など海外で暮らしていたそうですが、金融工学に興味を持っていた。「将来、M&Aをやりたい」と話していましたが、こちらはビジネスの知識がゼロ、最初は何を話しているのか分からなかった。彼とは東大工学部でも一緒でしたが、どんどん刺激を受けました。外資系金融機関を経て今はオンライン診療で知られるメドレーの最高財務責任者をやっています。
いじめもほとんどないし、互いに足を引っ張り合ったりもしない。一方で個人主義のオタクの生徒ばかりです。リーダーシップを身につけたり、チームなど組織をまとめたりするなどの社会性がつくのかと問われると疑問符がつきます。苦い経験があります。地元の杉並で外国人留学生向けのボランティアに参加して、リーダー的な役割を担いましたが、不協和音が起こり、うまくまとめられませんでした。「彼は筑駒なのにね」と冷ややかな目を向けられました。
筑駒OBで経営者などのリーダーになる人は比較的に少ない。私が実際のマネジメント力を磨くのは東大に入って以降です。それでも狭義のマネジメントには収まりきらない、新しいビジネスを切り開く上での基は、筑駒での体験や仲間だったと感じています。
(代慶達也)