変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

子音の立て方ひとつで言葉の表情が変わる

部員に話を聞いた。

――合唱部に入った理由は?

生徒F 両親が歌をやっていて、小さいころから歌うのが好きでした。でも独唱しかしたことがなくて、みんなで1つの声を紡ぎ上げる合唱に挑戦してみたいと思いました。演劇部にも引かれたのですが(笑)。

生徒G もともと歌は好きでしたけど、ちゃんと練習したことはありませんでした。最初は友達に引っ張られて入ったのですが、やってみたら楽しかった。

――部の自慢は?

生徒G ふだんはかなりゆるいんです。でも歌い出すとみんなキリッとします。その切り替えができるから、短い練習時間でもなんとかやっていけているのだと思います。

生徒F 勉学との両立が必要なので、週4回、放課後に1~1.5時間という短い練習時間でやっています。

生徒G 集中力が高いよね。

ソプラノ担当の水谷帆乃佳さん(左、高2)と副部長でテノール担当の蓮尾貴志さん(高2)

ソプラノ担当の水谷帆乃佳さん(左、高2)と副部長でテノール担当の蓮尾貴志さん(高2)

――合唱の醍醐味は?

生徒F 顧問の先生が、歌の詩の意味を何度も何度も説明してくれて、歌の背景までもしっかり理解して歌うようにくどいくらいに言われます。そうするとフレーズへの愛着が湧いてきて、自然に心がこもります。歌で表現するとは、その世界観にふさわしい形で言葉を届けることです。たとえば子音の立て方ひとつで言葉の表情が変わるんです。

生徒G 僕は大会前にノドの調子を悪くして、練習を見学していたことがありました。仲間の合唱を外から聞いて、鳥肌が立ちました。たくさんの声を1つの響きにして詩の世界を豊かに表現するなんて、どんなに歌がうまくても絶対に1人ではできないことなんです。

――大会と定期演奏会ではどちらに大きな意味がありますか?

生徒F 比較できるものではないですが、私は定期演奏会を重視しています。純粋に歌を聴きに来てくれているお客さんに、自分たちの歌を真正面からぶつけて、技術だけではなくて自分たちの気持ちを届けることができるからです。高文連の大会ではどうしても技術的な点に意識が向いてしまいがちになると思うのですが、そこでもあえて定期演奏会で歌うときの気持ちで歌うようにしています。

――部としての課題は何か?

生徒G 副部長という立場から言えば、勉強との両立ができるように部活を運営しないと、結局続けられなくて退部者が出てしまうということです。勉強と部活の両立は、結構大変です。

演劇部も合唱部もとことん本物を追求している。「学校の部活だからこの程度でいいや」という妥協は感じられない。一方で、演劇部と合唱部のメンバーに話を聞く限り、「いまは部活が楽しいから勉強はいいや」という発想もない。「勉強をしっかりしたうえで、限られた時間の中で部活にも全力を注ぐ」を本気でやろうとしているのがひしひしと伝わってきた。

<<(上)共学でも「おとこくさい」 久留米大附設の自由と自治
(下)久留米大附設の「秀才」支える ゲーセンの人間教育 >>

久留米大学附設中学校・高等学校(福岡県久留米市)
創立は1950年。久留米大学商学部構内に附設高等学校ができた。中学の1学年定員は160人、高校から40人の入学枠がある。学校に男子寮が併設されているので広域から生徒が集まる。生徒の約2割は寮暮らし。2020年の東大合格者数は31人。東大・京大・国公立大学医学部合格者数の5年間(2016~20年)平均は106.8人で全国12位。同じく国公立大医学部合格者数では全国5位。卒業生にはホリエモンこと堀江貴文氏やジャーナリストの鳥越俊太郎氏、タレントで弁護士の本村健太郎氏などがいる。

「進学校の素顔」記事一覧

新・女子校という選択 (日経プレミア)

著者 : おおたとしまさ
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 935円 (税込み)

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedoNIKKEI SEEKS日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック