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教育の風向きは海城の進路でわかる!?

08年からが第3期。ひと言で言えば、教育の多様化・個別化・深化のフェーズである。11年には高校からの募集を停止し、中学での帰国生入試を開始した。欧州、アジア、米国……バラエティー豊かなバックグラウンドをもつ生徒たちが集まり、教室のなかに文化の多様性が生まれた。そこから米ハーバードをはじめとする海外大学への進学者も出ている。

「KSプロジェクト」のプログラミング講座(2017年筆者撮影)

「KSプロジェクト」のプログラミング講座(2017年筆者撮影)

15年にはICT教育部(校務分掌)をつくるなど、教育のICT化を加速させた。2017年には「KSプロジェクト」を始動。「プログラミング講座」「総合フィールド演習」「SDGsゼミ」など、生徒の興味関心によって選択できる探究学習の講座だ。18年からは宇宙航空開発機構(JAXA)の宇宙飛行士育成手法を応用した非認知能力養成プログラムの開発に実証協力校として参加している。20年には経済産業省の「未来の教室」の一環として行われる「STEAMライブラリー事業」へ、普通科高校としては唯一の参画を決めた。

こうして海城は、「新しい学力」「新しい人間力」「グローバル」「ICT」「探究学習」「STEAM教育(芸術的視点を含めた創造的理数教育)」と、常に時代の一歩先を行く改革を、誰から要請されるでもなく自らに課してきた。時代との齟齬(そご)が生じてから改革するのではなく、時代に対するアンテナを常に張っておいて、改革をし続ける。当然うまくいかないこともある。そんなときには微調整を続ける。それが海城のスタイルだ。

時代の風向きを読む力は、海軍予備校以来の特殊技能であろうか。これからの教育の風向きを知りたいのなら、海城が次に何をするかをベンチマークにしておくといいと、私は知り合いにこっそりと耳打ちすることがときどきある。

海城中学高等学校(東京都新宿区)
創立は1891年。海軍軍人だった古賀喜三郎が私財をなげうち「海軍予備校」を興したのが始まり。1学年約320人の完全中高一貫校。2020年の東大合格者数は59人。東大・京大・国公立大学医学部合格者数の直近5年間(2016~20年)平均は89.4人で全国19位。卒業生には、アナウンサーの徳光和夫氏、落語家の立川談笑氏、ドリコム社長の内藤裕紀氏などがいる。

(中)建物自体が教材に 海城の新理科館が生む新しい学び >>

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