建物自体が教材に 海城の新理科館が生む新しい学び
海城中学高等学校(中)教育ジャーナリスト・おおたとしまさ

新理科館が海城の新しい顔になる(学校提供)
<<(上)海城は時代の風を読む 学校改革し続けた30年
(下)海城が取り組むSTEAM教育 美術で育むタフネス >>
2021年9月から新理科館での学びが始まる
現在、海城中学高等学校は校舎の建て替えを行っている。2021年9月から、9つの実験室、階段教室、講義室、温室などを備える新しい理科館で学べるようになる。正門を入って左手に、吹き抜けを内包した鉄骨構造3階建ての建物が、前庭と一体化する形でできる予定。いわば海城版STEM教育(科学・技術・工学・数学の総合教育)の新ホームグラウンドだ。
「建物自体が教材になる」がコンセプト。天井を一部スケルトン仕様にすることであえて配管を丸見えにした。エレベーターの壁面も一部ガラス張りにしてしくみが見えるようにした。屋上は緑化し、植物の観察ができるようにする。環境学習の一環として、地下100メートルまで穴を掘り安定した地熱を利用して省エネができるようにしたり、太陽光パネルを設置したりもした。
1961年に建てられた旧理科館では実験室の数が限られており、実験・観察施設の拡充は理科教員たちの長年の悲願だった。125周年事業として2012年に理科館建設プロジェクトが立ち上がった。当初は旧理科館とそれに隣接する4号館を同時に取り壊して再編成する計画だったが、東京オリンピック開催の決定により建設費が高騰してしまい、計画自体が一時凍結された。
しかし探究型授業やアクティブ・ラーニング推進の観点からもそのための設備の更新は喫緊の課題であるとの認識から、18年にプロジェクトが再開。理科教員が総出で議論をくり返し、当初案から予算規模を縮小する形で新案を作り直し、19年4月に旧校舎の解体を開始した。
建替中は騒音も出るし、施設使用に制約も生じる。しかし海城では、工事自体も教材にしてしまう。希望する生徒たちを対象に、段階ごとに工事現場の見学会を行う。「建築系に進む生徒も毎年一定数います。彼らにとってはとても貴重な機会だと思います」と教頭の内田玄司さん。