根拠ある自信を持つ コロナ禍の転職、成功する3資質
経営者JP社長 井上和幸
周囲の人たちの悩みや気持ちを受け止められる人
次に、採用企業が幹部・リーダーにいま確認したいのは、「社員や取引先・ベンダーなどのコーチ役となれる資質を持っている人」か否かです。
「あの人と話すと、自分の考えがはっきりする」「あの人に話を聞いてもらえると、それまで悩んでいたことがうそみたいに思える」「あの人が話し相手だと、自分でも気づいていなかった自分の考えや思いがどんどん言葉に出てくる」
こんな人が、あなたの周囲にも1人か2人、いるのではないでしょうか。顧客のニーズをつかむのがうまい。部下や同僚、あるいは上司の悩みや気持ちをうまく拾い上げてくれる。こうしたコミュニケーションができる人は、相手にとって自分を正しく理解してくれているということで信頼度が高まり、求めている答えを返してくれるので顧客満足度、人間関係満足度が高まります。
相手のモチベーションを上げ、実はこうしたコミュニケーションができることで当人の自己肯定感も高まり、自分自身の仕事のモチベーション向上にも一役買います。
私はこれを「取材力のある人」と呼んでいるのですが、心理学的にいうと「傾聴力」ということになると思います。
「傾聴」は、米国心理学者でカウンセリングの大家であるカール・ロジャーズによって提唱されました。カール・ロジャーズは傾聴を「積極的傾聴」と呼び、自らが行ったカウンセリングの事例を分析して、話を聴く側には3つの要素が必要である(「ロジャーズの3原則」)と説いています。
(1)自己一致(congruence)
相手と自分が見ているものを一致させること。相手の話の中で自分が理解できていないことが何かを確認し、それを埋める力
(2)共感的理解(empathic understanding)
相手の立場になって共感を示すこと。論理的な理解だけでなく、相手に心理的な安心感を与える力
(3)無条件の肯定的配慮(unconditional positive regard)
自分の善悪や好き嫌いでの評価をせず、相手の言葉をいったん全て承認する。肯定的な関心を持ちながら話を聴く力
どうでしょう。理解はできても、なかなか実際にそのようにはできないなぁという読者のかたもいらっしゃるかもしれません。
パーフェクトでなくとも、この3つを自分の中で意識しているかどうかだけで、かなり差がつくと思います。積極的傾聴の態度は、面接時に非常に効果的ですし、それにとどまらず日常のコミュニケーションで生かしていただければ、おおよそ自分から人間関係を悪化させることはまず起きないでしょう。