クラブハウスの魅力・難点 しゃべりの腕磨きにも一役
ラジオ流「聞き流し」との違い
どうやらクラブハウスでの対話はかなりオープンな雰囲気で進められているようだ。米国では地域のラジオ番組で、聴取者が電話越しに意見を述べる形式が昔から続いている。リアルな生活者意識を示すものとして知られていて、そういった肉声を重んじる市民文化がクラブハウスにも息づいているのかもしれない。別の参加者にも話を聞いてみた。
参加者B 「私の使い方は、ラジオに近い格好です。基本的には流しっぱなし。何か別のことをこなしながら、耳に入ったフレーズだけを聞く感じです」
梶原 「ラジオは仕事や勉強のかたわら、流し聞きする人が昔から多く、自動車の運転中にも好まれてきた。クラブハウスもそういう使い方であれば、気楽に付き合っていけそう。ただ、ラジオはそれなりのプロが構成していて、語り手もアナウンサーやタレントで、しゃべり慣れた人たち。誰でも語り手になれるクラブハウスとは事情が違うかも」
参加者B 「確かにしゃべり手のスキルにはかなりばらつきがあります。ルームを立ち上げる人には、人前でしゃべり慣れている人も多いようで、言いよどむことはそう多くないけれど、途中から呼び込まれて話すゲストのスピーカーには、しゃべりがこなれない人も珍しくありません」
梶原 「誰もが上手にしゃべる必要はないだろうけれど、別の作業をしながら聞く場合は、スムーズにしゃべってもらえないと、BGM的に聞き流しにくくなってしまうかな。プロではない語り手に、そこまでのしゃべり品質を求めるのは厳しいから、ラジオとは別物と考えて、オーディエンスのほうが受け入れていくしかない気がする」
参加者B 「聞き取りやすさ以上のメリットに感じられるのは、ルームの多様性。ラジオ番組よりも多彩だから、とりあえずルームに入ってみて、気に入らなかったら、すぐ次に移るという、ザッピングのような聞き方を楽しめます。ただ、聞き始めたところからのスタートとなり、それまでの聞き逃しをさかのぼれないので、話の流れに乗るまでに手間取ることもあります」
梶原 「テーマが多いのは、確かに魅力的。もっとも、しっかり聞いて、ルームに残るかどうかを判断するためには、そこそこ意識を向けて、内容を聞き取る必要があるから、この点も流し聞きの邪魔になるかも。ラジオは最初から流し聞きをある程度、織り込んであるので、耳にやさしい」
参加者B 「クラブハウスという名前の通り、結構、内輪のムードが出来上がっているルームもあります。秘密の会合をのぞき見するかのような感覚を味わえるのはそのおかげです。あまりにオーディエンスを意識されてしまうと、このメディアならではのひそやかな雰囲気が薄れてしまうので、内輪感とメディア性の間で持ち味を保つさじ加減が難しいところです」
梶原 「聞く人の予備知識や素養が一定ではないから、そのコントロールは大変だろう。そもそも他人に聞かれたくないケースもあるはず。そういう場合は『部外者お断り』みたいなこともできるの?」
参加者B 「できますよ。最初からルームの属性を『Closed』に設定しておけばいいだけです。自分がフォローしている人しか参加できない『Social』という設定も選べます」
梶原 「入室の設定をうまく使えば、少人数の雑談部屋みたいな使い方もできるわけか。今は大勢のオーディエンスを呼び込むようなルームが話題になりやすいけれど、いずれはそういうプライベートなルームが普及するのかも」