変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

しゃべりのスキルを磨くツールに活用

参加者ごとにクラブハウスの使い道はかなり異なるようだ。ビジネスパーソンが個人的な学びや、しゃべりテクニックの磨き上げに利用することもできるのだろうか。

参加者C 「僕は主に『出会いの場』という意識で参加しています。同じ業界であっても、じかに言葉を交わしたことのない人は多いので、参考になる話が聞けるのは、とても貴重な体験です。カメラを使うZoomと違って、最初から顔を見せる必要がないのは、心理的にかなり楽です」

梶原 「確かにそうだ。特に新型コロナウイルス禍のせいで、他人と会う機会が減り、ましてや雑談のチャンスなんてめっきり減ったから、家で雑談できるのはうれしいだろうなぁ」

参加者C 「昔はイベントの待ち時間とか、セミナー・研修のアフターとかに、いろいろな人と語り合う時間を持てました。でも、今はそうはいかない。だんだんと打ち解けてきたら、飲みながらの参加も増えるのではないでしょうか」

梶原 「しかし、記録を保存できないのは、使い勝手が悪い。しゃべったことをすぐに忘れてしまう身としては、お開きになった瞬間、何にも残らないってことになりかねない」

参加者C 「実際、そんな感じはあります。1時間余りもしゃべった後、『あれ、結局、何を話したんだっけ』となることも。オーディエンスの立場で聞いていたときでも、終わった瞬間、何だか時間を無駄に費やしたような気持ちになったことがありました。ずっと聞いていられるせいもあって、ついついルームを渡り歩いてしまい、やたらと長い時間を注ぎ込んだ経験もあります」

梶原 「ユーチューブとは違って、目を使わないので、ながら聞きで済むなら、時間を有効に使えそう。でも、音声に気を取られてしまえば、結局はながら作業のほうがおろそかに。聞く時間の配分も含めて、参加者自身で決めるバランスが大事なメディアということになるのかな」

参加者C 「話題のほかにも、いろいろと役に立つことがあります。たとえば、しゃべり方。他人のしゃべりをじっくり聞く機会はコロナ禍のせいで減っているので、貴重な機会となります。口ぶりの癖みたいなものに気づく手がかりにも使えます。たとえば、やたら『ちょっと』という言葉が出てくる。耳ざわりな口癖だなとか。論理の組み立てが雑な話し手にイラッとすることもしばしばです」

梶原 「それはいいかも。原稿を読むわけにはいかないから、話し手の『地』が表れやすいはず。しゃべりのスキルを磨くうえでは、他人の癖や失敗を、勝手に反省材料として拝借する手はありそうだ」

参加者C 「他人と言葉を交わすチャンスが減っている中、積極的に参加して、発言の機会を得るのは、しゃべりの瞬発力を高めるのにも役立ちそう。持論を語ることができそうなルームを選んで、腕試しに臨むのも悪くないでしょう。上手な話し手の話術を盗むのにも使えます」

過去にはいろいろな新興メディアが登場しては、支持を得られないままに消えていった。クラブハウスはまだ登場したばかりだけに、先がみえない。でも、初動の様子だけをみる限りでは、ツイッターやフェイスブックとは異なるポジショニングに成功しているように映る。

声をなりわいとする者としては、テキスト主体のメディアが多かった中、肉声に絞ったアプローチを応援したい気持ちに誘われる。長電話とラジオの「いいとこ取り」みたいな立ち位置にもちょっとした親近感を覚える。期待を込めて、飛躍を見守っていきたい。

梶原しげる
 1950年生まれ。早稲田大学卒業後、文化放送のアナウンサーに。92年からフリー。司会業を中心に活躍中。東京成徳大学客員教授(心理学修士)。「日本語検定」審議委員。著書に「すべらない敬語」「まずは『ドジな話』をしなさい」など。

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedoNIKKEI SEEKS日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック