もとは工業高校? 大阪星光学院、100日寝食ともに
大阪星光学院中学校・高等学校(上)

黒姫の「山荘」でのキャンプファイア(学校提供)
こうして若者に寄り添う姿勢が「アシステンツァ」と表現されるようになった。アシステンツァは世界のサレジオ会に共通の基本姿勢であり、アイデンティティーでもある。ボスコは「愛なくして信頼なく、信頼なくして教育はない」という言葉も残している。
校地内には伝説の料亭跡地も
大阪星光学院の創立は1950年。四天王寺をはじめ、多くの寺院がある地域に、唐突にカトリックの学校がつくられたため、当時は異様に思われていたようだ。
ちなみに校地の一部に「蕉蕪園」という俳諧植物園がある。そこはもともと「浮瀬亭」という料亭の跡地だった。松尾芭蕉や与謝蕪村らも訪れて句を残したという伝説の料亭である。芭蕉の290年忌、蕪村の200年忌、大阪星光学院の30周年を記念して、83年に造成された。
「トリノのオラトリオと同じ思想から、当初は工業高校になるはずだったんです」と教頭の宮本さんは言う。しかし10年目くらいから進学校として認識されるようになった。1968年に聖トマス小崎研修館および黒姫の山荘が落成した。南部学舎ができたのは1973年。上記宿泊行事はこのころからの伝統だ。
「オラトリオの精神を現代の日本社会のニーズにあわせたうえで、頻繁な合宿生活で再現しています。共同生活をすごす中で、自主性、協調性などを養う機会となります。また、生徒間、生徒・教員間の絆を強め、一生涯の関係が構築されます」(宮本さん、以下同)
教育目標は聖書の有名なフレーズにちなんで「世の光であれ」。大阪星光学院では、「世の光」を「家族・社会・世界の中で生きる喜びを分かち合う人」と解釈している。
「大阪星光学院では、世の光を3段階で説明しています。最初はろうそくの光です。自分ひとりを照らす力しかありませんが、同時にかけがえのないものという意味があります。次に電灯をイメージします。周囲を照らすことができるようになります。周囲に安心を与えることができます。最後が灯台のイメージです。社会全体を照らすリーダーということです」

立山連峰縦走(学校提供)
世界138カ国で約2500もの学校を運営する教育修道会サレジオ会によって1950年につくられた男子校。1学年は約190人で、高校から約10人の募集がある。2020年の京大合格者数は30人、東大は6人、国公立大医学部は36人。東大・京大・国公立大学医学部合格者数の直近5年間(2016~2020年)平均は92.2人で全国17位。卒業生には、吉本興業元会長の林裕章氏、精神科医の名越康文氏、俳優の内藤剛志氏、作詞・作曲家のヒャダイン氏などがいる。