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<転職による賃金変動(全産業・全年齢)>

出所: 厚生労働省 雇用動向調査より、KEARNEY作成

出所: 厚生労働省 雇用動向調査より、KEARNEY作成

こうした転職による年収変動の10年から19年にかけての変化を年代別に見ると、全年代で年収が変らないとする比率が減少していますが、35歳以上で「年収が増加した」とする比率が増加しているのに対して、34歳以下では「年収が減少した」とする比率の増加の方が多いのです。これは、10年前と比べて、ポテンシャルを重視する若い層よりも、経験・スキルをもったミドル以上の層に対する市場の評価が向上しつつあることを示しているように私は考えています。

<転職による賃金変動の変化(2019年と2010年の比較)>

出所: 厚生労働省 雇用動向調査より、KEARNEY作成

出所: 厚生労働省 雇用動向調査より、KEARNEY作成

18年に関連法が可決された働き方改革も、こうした企業の採用方針をシフトさせる要因となり得ます。働き方改革の柱の一つである長時間労働の是正は労働者の心身の健康を守る観点で非常に大事な取り組みです。一方で、定められた労働時間を守るために、従来と比べてチャレンジングな業務を通じた育成・成長を促すということに企業が取り組みにくくなるのも事実でしょう。

もちろん、そうした意義の少ない長時間労働を横行させないために必要な施策です。しかし企業としてはより高い生産性を実現するために、従業員に対して定型化された業務や実力に見合った業務を割り振るようになって、受け身となってしまいがちなので、業務を通じて自然とスキルアップする機会は減少する可能性があります。他方、採用面ではポテンシャルを評価して採用後に育成するのではなく、経験・スキルを評価し高い生産性で即戦力となる人材の採用をより重視するようになっても不思議ではありません。

個人事業主として契約する「プロ」増加の可能性

19年には、吉本興業と所属する芸人・タレント間の契約の在り方が話題となりました。この話題には様々な議論がありましたが、個人事業主として企業と専属契約を結ぶという契約のあり方が広く知られるようになりました。これは芸能界というやや特殊な世界の話に聞こえますが、弁護士やプロ野球選手などのプロフェッショナル業に多く見られる形態でもあります。

やや極端ではありますが、今後一般企業においても個々人の経験・スキルを重視した採用が進んでいくようになると、企業と雇用契約を結ぶ一般の労働者とは別に、特に高いスキル・経験を有する人はプロ人材・個人事業主として企業と契約しながら業務を行うというケースが増えることも考えられます。

18年にタイで開催されたあるカンファレンスのパネルディスカッションの中で、デジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性が認識されるなか、デジタルやアナリティクスにたけた人材をいかに採用するか、またいかに社内にとどめておけるか、ということが議論されました。日本から参加していたある企業の役員は、「ひとつの解として社内で雇用することは諦め、社外との連携を進めるしかない」といった趣旨の発言されていました。

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