転職の年収増減にメリハリ 経験ある35歳以上高い評価
A.T. カーニー 筒井 慎介シニア パートナー
これは、外部企業との連携だけを意味するのではなく、業務で必要とされるスキルが高度化していくなかで、そうしたスキル・経験を保有する人材はプロ人材として市場価値を高め、一企業に捉われない働き方もできるようになるというふうにも解釈できるのではないでしょうか。スキル・経験の有無が自身のキャリア・人生の選択自由度を規定する、というある種当たり前のことが、より強化されるという方向性自体は十分に起こりうると思います。
私自身の話をさせていただくと、新卒でジェーシービーに入社し、その後現在のカーニーに転職。そして1年間、休職して経済産業省に出向した、という経歴です。ジェーシービーからカーニーに転職した際、いくつかの理由はあったのですが、そのうちの一つが「自身の市場価値が低下し始めているのではないか」という焦燥感でした。ジェーシービーという会社は、若手にも多くのチャレンジの機会を提供してくれて、また前例に捉われず新しい取り組みを奨励する雰囲気もあって、非常に多くの勉強をさせてもらって今日の私の基礎をつくってくれたと感謝しています。
現状にとどまるか、ステップアップを目指すか
社内ネットワークも広がり、他部署や諸先輩に様々な協力を得やすくなるなど、社内市場価値は向上したのですが、反比例するように成長曲線は徐々に鈍化して社外市場価値が低下しているのではないか、と感じるようになりました。そこで、社内のみで通用する価値を一度捨て去って、社外市場価値の成長カーブを再度押し上げたいと考えたのが、転職を選択したひとつの理由です。
次の経済産業省への出向も、たまたま機会に恵まれ、また会社の理解と支援もあって、経営コンサルタントとしてのキャリアを一旦停止してでも、自分の関心に基づいて、今後のキャリアで必要となる知識・経験を得ることを目的に、自ら望んで選択したものだったのです。
もちろん、一社にとどまり活躍を続け、社内市場価値を最大化するという選択も否定しません。でも、それは思考停止の結果ではなく、あくまで自分自身のキャリア形成を考えたうえでの選択の結果であるべきだと私は思います。現状の環境を続けることが市場価値につながる経験・スキルの向上にどの程度資するのか。これを客観的に見つめ、また働き方改革で従来より業務による拘束時間が短くなるなか、残りの時間を経験・スキルの向上に振り向けて意識的に過ごせるかどうかが、自分が望むキャリア形成を実現するために一段と重要になるはずだと考えています。
2000年、東京大学工学部科卒。ジェーシービーを経て、A.T. カーニーに入社。エネルギー、電力、都市ガス、通信業界を中心に、事業戦略、M&A戦略、新規事業立案、シナリオプランニングなどを支援。2013~14年に経済産業省資源エネルギー庁電力改革推進室(課長補佐)に出向。14~16年度まで京都大学 大学院経済学研究科 特任准教授。