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エピソードを通して、欠点をさらす

チームに受け入れてもらうには、好感や理解が必要になってくる。入社年次や所属先といった形式的な情報からでは、人柄や考え方が伝わってきにくい。自己紹介に盛り込むべきなのは、こういったヒューマンな情報だろう。別の言い方をすれば、エピソードや体験談だ。具体的な出来事はリアルな人物像を伝えるうえで効果が期待できる。自己紹介を聞く雰囲気を和らげるのに役立つ、自然な笑いを誘ううえでも失敗談のようなショートストーリーは有用だ。

あらかじめ原稿を用意しよう。「たかが自己紹介のために原稿を書くなんて」と思う人がいるかもしれない。でも、短時間できっちりストーリーを語りきるには、丁寧な言葉選びが不可欠だ。人前でしゃべりながら、エピソードを思い出したり、語り口を工夫したりなどといった、複雑な芸当は難易度が高い。理想的なエピソードを思い出したうえで、聞き取りやすい文言を用意するのにも推敲が欠かせない。だから、ちゃんと原稿を書こう。

そして、リハーサルにも手を抜かないようにしたい。自己紹介がしばしば退屈に聞こえるのは、やたらと早口で平板に語られるからだ。大勢が次々と述べる場合、時間の制約もあるので、コンパクトにならざるを得ない。しかし、簡潔と単調は別物だ。たとえ短い内容であっても、表情の豊かな語り方は可能だ。ただ、それには練習が必要になる。しっかり抑揚を付けて、間(ま)をつくってやれば、ストーリーが味わいを増す。必ず録音して、まずい部分を改めるようにしたい。

盛り込みたいエピソードの筆頭は「ドジな話」だ。仕事上の失敗談や、うっかり、勘違いなど、ちょっと抜けたところのあるキャラクターを示すような出来事が望ましい。エリート意識が強く、プライドの高い人はこういう「欠点」を隠したがる。だが、そつのない人は敬遠されがちだ。自分と同じような完璧さを他人にも求めると思われやすいからだ。逆に、過去に自分がミスを犯し、その体験を朗らかに語れる人は、人間味が豊かだと感じてもらいやすい。自己紹介を通して与えたいイメージはこの脇が甘い感じだ。

ミスを犯さないタイプの人は、他人に厳しく、痛みや苦しみに共感を示さないと思われがちだ。実際にそうであるかどうかは関係なく、そういうイメージを招きやすい。一方、失敗談を自ら明かせる人はささいなことにこだわらず、腹を割って話せる人という印象を与える。この懐が深い人物像は「話しかけやすい」「気さく」「朗らか」などの関連イメージも引き寄せて、トータルな好人物感をもたらす。これは自己紹介の大きなメリットになる。

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