まったく違うものに共通点 発想飛ばすアナロジーの力
デザイナーから学ぶ新たな切り口の作り方(5)

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「デザインの世界には、ビジネスマンが日々の仕事の中で新たな価値を創るためのノウハウがたくさん存在しています」。日本でのデザイン思考の第一人者といわれる佐宗邦威氏はこう言います。先ごろ大幅に加筆修正して文庫化された同氏の著書『世界のトップデザインスクールが教えるデザイン思考の授業』(日経ビジネス人文庫)から、デザイン思考の入り口となる思考法を紹介します。
アナロジー思考――まったく違うものに共通点を見つける
デザイナーのもう1つの強力な発想を飛ばすツールが、現在の固定観念(メンタルモデル)から離れ、意図的に発想をジャンプさせるための「アナロジー思考」です。アナロジーとは、日本語で「類推」と訳されますが、一見違うように見えることに共通点を見いだすことを指します。
例えば、新しいオンラインでの研修の企画のアイデア出しをしているとしましょう。「これって何かに似てないかな? たとえば、ラジオのような研修があるとしたらどうだろう?」。ラジオといえば、パーソナリティが日常のちょっとしたことを語りながら、読者と対話をしていき、気張らず聞けるのが良いところです。研修のような場でも、もしラジオのようなカジュアルな体験を作ることができるとしたら、むしろ、ちょっとゆるく多くの人が夜に子どもを寝かしつけした後にリラックスしながら聞ける一般向けの研修があってもいいかもしれません。研修と、ラジオという一見関係なさそうなものに、リラックスして参加できるという共通点を見つけることで新たな企画が生まれました。デザイナーは、このアナロジーが得意技です。誰もちゃんと教えられていなくてもできるようになるのは、明日までに20個の新しい時計のアイデアを出せ! と言われた時に、無理やり数を出すためには、他からアイデアを借りてくるのが一番なのです。「動物のような時計とは?」、「氷のような時計とは?」などどんどん一見関係なさそうなもので似たものがないかを考えていくと時々、意外な良い切り口に出会ったりするし、安定して多くのアイデアを出すことができるのです。