変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

――リストラや上司との関係悪化など外的要因でキャリアチェンジを余儀なくされた場合、どのようにリカバリーすればいいですか。

伊藤:全ての経験は無駄になりません。これは若い人に限ったことではありません。失敗した経験、つらい経験、困難な状況に立ち向かった経験は人を成長させます。大切なのは(米アップル創業者のスティーブ・ジョブズが言ったように)「Connecting the dots(コネクティング・ザ・ドッツ=点と点をつなげる)」に持って行くことです。自分の経験で言うと、銀行に勤めていたときに、頭取に「辞任すべきだ」とメールを送って左遷されたことがあります。それからすると、ほとんどのことは大したことないと思えるようになりました(笑)。

源田:これだけ不確実な時代で、テクノロジーの進歩も激しく、デジタルトランスフォーメーション(DX)で産業界が大きく変わっていくなかで、今までの仕事のやり方、「それをやっていればいい」ということは捨てた方がいいでしょう。市場価値というと変かもしれませんが、自分が会社の中だけで通用する人材なのか、社会に出て活躍できる人材なのかを意識すべきでしょう。「外的要因」とのことですが、そもそも会社にしがみつかなくてはならない程度の経験、チャレンジしかしていないのであれば、むしろそれが問題です。しかし、変えていくことはできます。とにかく経験が大切です。外部の人材ともつながり、会社の中だけでなく、社会に必要とされる人材になろうというのが解だと思っています。それを普段から意識してやっていればいいのではないでしょうか。

源田泰之氏  ソフトバンク  コーポレート統括人事本部本部長。1998年入社。営業を経て2008年から現職。グループ社員向けの研修機関「ソフトバンクユニバーシティ」、後継者育成機関「ソフトバンクアカデミア」、新規事業提案制度(SBイノベンチャー)の責任者でもある。16年から公益財団法人「孫正義育英財団」の事務局長を兼任。18年からディープラーニングのインキュベーション及び投資事業を行うDEEPCOREのHR Advisorも務める。

――コロナで先行き不透明な中、どんな人やチームが成果を出せているのでしょうか。

伊藤:コロナで想定外のことが起きました。思考を止めずに前へ進み、対応できたのは、常識を疑いイシューを立て、状況分析して、構造化して行動する――クリティカルシンキング(批判的思考)ができた人です。普段からいろいろなことを考え、ここの常識が崩れたらどうしようとかと考える。それは想像力であり、ビジネスパーソンとしての地力だと思います。

源田:コロナ禍で難しくなったもののひとつがマネジメントです。マネジャーがこれまでのやり方でチームメンバーとコミュニケーションをとるかが難しくなりましたが、「直接会えないからどうしようもない」と思考停止するか、自ら考えて動けるか、ここで差がついたと思います。どんな状況下でも何をすべきかを考え、行動してそこから何かを学ぶ――そこに差があったと思います。

伊藤:ソフトバンクもそうだったかもしれませんがヤフーではマネジメントの問題は発生しませんでした。マネジャーとメンバーの個人面談「1on1(ワン・オン・ワン)」が浸透していたことが大きかったと思います。1on1をやっていれば、リモートだろうが対面だろうがほぼ変わらずマネジメントできます。メンバーが何をしていいのか分からないとしても週1回、30分も話せばモヤモヤは氷解するでしょう。驚くほど多くのビジネスパーソンが1on1をやっていません。まずやってみることが大切です。

――転職の際にどんな業種でも通用するマインドセットやスキルはなんですか。

伊藤:どんな業種でも通用するものが2つあります。ひとつはクリティカルシンキング力。単純な論理思考ではなく、「そもそも」というところからイシューを立てて、分析して構造化して結論を出して動く。この一連の流れができる人はどこの業種でも通用します。マインド、スキル、アクションを回していくことです。気づいたらすぐ行動して、行動したら振り返り、どういう意味があるのかを考えて、気づきを得る。それが自分のスキルにインストールされていくのです。振り返り、気づき、行動の繰り返しでどんどん成長することができます。

源田:マインドセットでいえば、「これがあなたの仕事、すべきことだ」といわれたときに、「なんでおれがこんなこと」と思うのか、ポジティブに「まずやってみよう」と捉えるか。ポジティブに行動し続け、その結果からどのようなことを学べるのか。それをきちんと回せる人は業種業界関係なく、自分なりの働きがいをつかんでいけるのではないでしょうか。スキルにこだわらずにいえば、私の場合は社外の人から教えてもらう機会が成長につながったと思います。社外の人との対話を意識してつくっていくことが大切です。

(セミナーは2021年3月30日にオンラインで開催)

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