画期的なチーズケーキを「発明」 原点は野球での挫折
Mr. CHEESECAKE代表 田村浩二氏(上)
転機は「親友の誕生日」
大学でも野球を続けるつもりだったが、高3の夏、岐路に立つ。希望していた大学の野球入試(セレクション)で、田村氏は選ばれなかった。いったん腹を決めれば努力は惜しまないだけに、「自分の可能性を信じられない場所」に身を置くのは嫌いだ。
「将来、プロ野球選手として活躍する人は、このセレクションで落ちないだろうと思いました。才能と可能性において、僕はスタートラインにすら立てなかったのだと突き付けられた。もちろん、野球を続ける方法はほかにもありましたが、『中途半端な成果のために、何となく頑張る』って苦手なんです。僕の中では、野球をやらないのに大学へ行くという選択肢もありませんでした」
この挫折経験から間もなく訪れた「親友の誕生日」が、思いがけない転機になる。同じ年の2学期のことだった。

「Mr. CHEESECAKE」の田村浩二代表はフレンチシェフの出身だ
「プレゼントを買おうにもお金がなかったので、悩んだ揚げ句、ケーキを作ってあげようと思い立ったんです。お菓子作りなんて一度もしたことがありませんでしたが、母が料理上手でおやつもしょっちゅう手作りだったので、自分にもできるだろうと思ったんでしょうね」
レシピを基に作ったケーキを渡すと、当の親友はもちろん、周囲にいた他のクラスメイトたちも声を上げて大喜びしてくれた。
「自分の手で作ったもので、みんなが盛り上がって、幸せそうにしている。その瞬間が、すごくいいなと思えたんです。よし、目指すなら料理人だ、と」
心が決まれば、まっしぐらだ。インターネット検索で調理師専門学校の情報を調べ上げ、志望校へ入学願書まで提出した後で、両親に報告した。
「大学4年間の学費がこれくらいで、専門学校なら2年間で半額以下。しかも、早く就職して稼げるから、家計にはプラスだと、『事後プレゼン』をしました。両親として心配や不満がなかったわけではないと思いますが、反対はされませんでしたね。息子が一度言い出したら聞かないのも理解してくれていたのでしょう」