勉強嫌いの純ジャパ 短期でTOEIC満点の英語学習法
スピーキング力は大学時代にオンライン学習で磨いた。最初はネット上でフィリピン人と会話したが、「陽気な南国の人たちとのコミュニケーションにはまった。実際に友人となった人もいる」という。
ATSUさんはただの英語オタクではない。名門のオーストラリア国立大学大学院の修了後に「世界4大会計事務所」のデロイトの豪州法人に入社し、5年でマネジャーに昇進したやり手の会計マンでもある。大学時代にネット上で海外に多くの友人ができていたATSUさんはすぐにでも英語圏で働きたいと思ったが、日本の企業に就職した場合、簡単に海外赴任が許されるわけではない。そこで当時、英語圏で永住ビザを取得しやすかったオーストラリアへの留学を思い立った。「商学部で会計を学んだので、公認会計士の資格を取ろうと考えた」という。
豪州で会計士に 副業で英語学習動画を投稿
海外で会計士になるのは無論至難の業。留学中も1日2豪ドルで過ごすなど極貧生活を強いられたが、「明確な目標があったので充実した毎日だった」という。豪州の大学院在学中に米ワシントン州の公認会計士の資格も取得した。
ユーチューブへの英語学習動画の投稿は大学時代から興味本位で始めていた。「実際に使う英語と日本で学ぶ英語がかけ離れているので、実用的で分かりやすい英語学習が必要ではないかと思い、投稿を続けるうちに火がついた」。会計士になった後も、英語学習動画の投稿を続けた。
「ATSUの英語学習動画はすばらしいよ」。デロイトの上司は副業にも寛容だった。現地のネーティブの社員もコンテンツづくりに協力してくれた。「Atsueigo」の制作メンバーは、動画編集者は福島県在住、エンジニアは東京と米シリコンバレー、デザイナーはオランダ在住の20歳の帰国子女と居場所はバラバラ。「世界中からツイッターなどネットで募集したメンバーだ。みんな本業があるが、意欲的で、能力やスキルも一流」という。Atsueigoは評判を呼び、英単語帳「Distinction」もネット通販で大ヒットした。
ATSUさんはコロナ禍の中、デロイトを辞め、2020年に帰国した。「日本で実践的な英語学習を普及させたい」とAtsueigo事業に本腰を入れる。グローバル人材の育成が不可欠と言われながら、いまだに英語を普通に話せる人材が少ない日本。ユーチューバーであると同時に起業家であり、教育者でもあるATSUさんの活躍の場はさらに広がりそうだ。
(代慶達也)